2021 年 60 巻 1 号 p. 8-14
目的 : 細胞診判定別に出現した深層型扁平上皮細胞の特徴を明らかにし, スクリーニングでの主観的判定を数値化する目的で, 深層型扁平上皮細胞を細胞形態計測学的に解析し, 細胞診判定別に比較検討した.
方法 : 2016 年 1 月〜 2016 年 12 月に本学付属病院にて細胞診を行った症例のうち舌縁部から検体が採取された 384 例を対象とし, 画像解析の手法を用いて核面積, 細胞面積, 核・細胞質比, 核形不整の程度, 核の濃染性を明らかにした.
成績 : 細胞診判定別の深層型扁平上皮細胞出現症例数 [比率 (実数)] は, NILM : 27 例 [8.6% (27/314)], SIL : 1 例 [2.0% (1/50)], SCC : 8 例 [40.0% (8/20)] であった. 核面積の平均値 (標準偏差) は, NILM : 66.0 μm2 (34.8), SCC : 82.6 μm2 (43.7) となり, SCC が有意に (p=0.042) 高値を示した. 形態解析の結果, 核形不整の程度は NILM : 1.25 (0.08), SCC : 1.29 (0.09) となり, SCC が有意に (p=0.028) 高値を示した.
結論 : SCC に出現した深層型扁平上皮細胞の核面積と核形不整の程度はNILMより有意に大きく, これらは細胞診判定の一助となる細胞所見であることが示唆された.