日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
症例
穿刺吸引細胞診で多数の破骨細胞様巨細胞を認めた浸潤性乳癌の 1 例
伊藤 沙織松山 篤二山田 博稲葉 千枝工藤 雅美松下 敦子塩谷 聡子西山 康之中野 龍治
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 62 巻 2 号 p. 111-115

詳細
抄録

背景:破骨細胞様巨細胞(osteoclast-like giant cell:OGC)の出現を伴う乳癌は 0.5~1.2%とまれである.われわれは,細胞診検体に多数の OGC が出現した浸潤性乳管癌の 1 例を経験したので報告する.

症例:30 歳代,女性.右乳腺 BD 領域に 3 cm 大の腫瘤を自覚し受診した.穿刺吸引細胞診で悪性と診断され,手術が施行された.細胞診では,結合性の強い重積集塊や孤在性の腫瘍細胞とともに,多数の多核巨細胞を認めた.腫瘍細胞の核は比較的小型ながら核形は軽度に不整で,核クロマチンは増量し,結合性が低下していた.多核巨細胞はライトグリーン好性の豊富な細胞質に,クロマチンの淡い数 10 個の核を有していた.組織学的に腫瘍細胞は充実胞巣状,篩状に増殖し,CD68 陽性の OGC が混在していた.充実型浸潤性乳管癌と診断し,免疫染色にてホルモンレセプター陽性,HER2 陰性であった.

結論:乳腺細胞診ではまれながら間葉系腫瘍や種々の組織型の乳癌に OGC が出現する可能性があり,その多くは luminal 乳癌である.OGC にとらわれることなく,それ以外の細胞に基づいて細胞診断を進める必要がある.

著者関連情報
© 2023 公益社団法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top