日本臨床細胞学会雑誌
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症例
進行癌の状態で発見・治療に至った耳下腺分泌癌の 1 例
戸澤 直登加藤 智美扇田 智彦小路口 奈帆子安田 政実
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2024 年 63 巻 5 号 p. 241-248

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抄録

背景:耳下腺分泌癌は,遠隔転移はまれであることから,進行癌で発見される例は少ない.

症例:60 歳代半ば,男性.CT 検査で,左耳下部に 40 mm 大の腫瘤に加え,右臓側胸膜に 14 mm 大の腫瘤と右胸水貯留を認めたため,肺癌の頸部リンパ節転移が疑われた.左頸部穿刺吸引細胞診では,核溝や軽度の大小不同を示す腫瘍細胞がシート状や一部乳頭状に認められた.細胞質は比較的豊富で,しばしば空胞化がみられた.Giemsa 染色で異染性を示す分泌物が観察され,耳下腺分泌癌が疑われた.左頸部腫瘤生検の免疫染色では,腫瘍細胞は S-100 蛋白にびまん性に陽性,Mammaglobin に一部陽性を示した.FISH 法においてETV6/NTRK3それぞれの分離シグナルを検出したため,分泌癌と診断された.右胸水貯留に対してセルブロックの作製を行い,免疫染色の結果が左頸部腫瘤生検とおおむね同様の染色態度であったため,耳下腺分泌癌の胸膜転移と診断された.

結論:臨床診断にとらわれずに細胞像から耳下腺分泌癌の可能性を指摘した.それに基づき,臨床医,病理医,および細胞検査士による協議のもと,診断から治療まで比較的円滑に進めることができた.

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