1982 年 21 巻 1 号 p. 57-65
子宮頸癌の早期発見に子宮頸部擦過細胞診は欠くべからざる検査であり, その検出率をあげるために細胞の採取法について種々の検討がなされてきている. われわれは子宮頸部擦過細胞診の細胞採取にあたり, 綿棒法とスクレーパー法を同一人に同時に施行して, 子宮頸癌初期病変および境界病変の検出率およびその推定診の正診率について両採取法の比較検討を行い, 以下の結果を得た.
対象は子宮頸癌の自主検診を目的として, 1978年から1980年にかけて和歌山労災病院を訪れた婦人4, 255名である.また細胞診の正診率に関しては, 子宮頸癌初期病変および境界病変として当院において手術を施行した婦人96名についてである.
自主検診における癌の検出率は浸潤癌10名 (0.23%), 初期間質内浸潤癌 (以下初期浸潤癌と略す) 15名 (0.35%), 上皮内癌23名 (0.5%), 高度異型上皮23名 (0.5%) である.
浸潤癌および初期浸潤癌ではスクレーパー法と綿棒法で検出率に差を認めないが, 上皮内癌ではスクレーパー法の23名に対し綿棒法では20名 (87.0%) で, 3名 (13.0%) のfalse negativeが, また高度異型上皮においてはスクレーパー法の23名に対し綿棒法では15名 (68.2%) で, 7名 (31.8%) のfalse negativeがみられた.
手術施行群における細胞像からの推定診の正診率では, 浸潤癌 (20例) はスクレーパー法の81.0%に対し綿棒法では81.2%, 初期浸潤癌 (21例) では75.0%に対し61.9%, 上皮内癌 (32例) では80.6%に対し69.6%, 高度異型上皮 (23例) では79.2%に対し48.2%であり, 正診率に関しては病変が軽度になるに従って両採取法間に差が著しくなり, かつ綿棒法においてはunderdiagnosisの傾向がみられた.
以上より, 子宮頸癌の初期病変およびその境界病変の一次スクリーニング時の細胞の採取法としては, 綿棒法に比してスクレーパー法がより有用であることが窺われた.