1982 年 21 巻 4 号 p. 720-725
症例は70歳の既婚女性で, 不正性器出血を訴え子宮全摘をうけた. 腫瘍は子宮底に広基性に付着するポリープ状の軟らかい腫瘍で, 外子宮口より突出していた. 切除材料の捺印標本にて, 腺様の悪性細胞が単独または集合して多数認められた. 細胞は小型, 類円形で, 辺縁の不鮮明な細胞質を有していた. 核クロマチンは細顆粒状で過染性を示し, カリオゾームもみられた. 核小体は著明に腫大し通常1個みられた. 子宮内膜の高分化型腺癌に類似していた. 同時に繊細なクロマチンと腫大した核小体を有する卵円形の核とcyanophilicに淡く染まる胞体からなる紡錘形ないし多形性の細胞が単独あるいは数個の集団として認められた. これらは未分化な内膜間質細胞肉腫の細胞に類似していた. 組織標本で認められた軟骨組織や類骨組織は捺印標本には認められなかった. 細胞化学的に, アルカリホスファターゼ活性は細胞により差異が強く, 腺様の悪性細胞は細胞辺縁を中心に強い活性を呈したが, 大型多形性の肉腫様細胞では活性を認めなかった. アルカリホスファターゼ染色は本例のような混合性腫瘍において, 上皮性成分と非上皮性成分の鑑別に有用なことが示唆された.