日本臨床細胞学会雑誌
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尿細胞診標本にみられるトリコスポロンの形態的特徴の検討
田口 勝二岩原 実藤田 正志村石 佳重大原関 利章若山 恵高橋 啓渋谷 和俊直江 史郎
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2000 年 39 巻 5 号 p. 298-303

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抄録

目的: 細胞診標本でのトリコスポロンの形態的特徴を認識するためカンジダとの相違点について検討した.
方法: トリコスポロンが分離された4例の尿細胞診標本を用いて菌の各種染色標本における染色性と形態について検討した.
成績: トリコスポロンとカンジダにおいて, パパニコロウ染色およびギムザ染色標本における染色性の差はみられなかった.しかし, PAS反応では, カンジダが濃染性均一に染め出されるのに対しトリコスポロンは濃淡様々な染色性を示していた.菌の形態を検討したところ, トリコスポロンは, いずれの検体でも酵母, 仮性菌糸, 真性菌糸の3種類の菌形態を示した.酵母はカンジダのそれより多形性に富み, 平均長径6.9±2.4μm, 平均短径2.9±0.9μmであった.菌糸は酵母の短径とほぼ同等の幅で, 一部は2~4分岐を示した.出芽型分生子は少なかった.また, 分節型分生子を一部に認めた.
結論: 尿検体中のトリコスポロンは, カンジダと比較して, 仮性菌糸, 真性菌糸, 出芽型分生子や分節型分生子の有無など多くの相違点を示した.

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