日本がん看護学会誌
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原著
放射線治療中の癌患者の倦怠感に関する研究
神里 みどり
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1999 年 13 巻 2 号 p. 48-59

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抄録

要 旨

本研究の目的は,放射線治療中の癌患者の倦怠感をアセスメントし,倦怠感の出現の有無・程度・パターンを明らかにすること,また倦怠感と精神的要因との関連性を検討することである.調査対象者は,これから放射線治療を受ける癌患者35名で,放射線治療をはじめる週を第1週としてその後各週に1回,計4週間にわたって経時的に倦怠感の測定とその関連要因に関して面接調査と参加観察を行った.さらに,対照群として,放射線未治療者30名の倦怠感を測定し,対象群と比較検討した.倦怠感の測定に米国で開発された倦怠感尺度Piper Fatigue Scale(PFS)を邦訳して使用し,その他にも2種類の倦怠感尺度を用いた.その結果,以下の知見が得られた.

1.本研究において邦訳した倦怠感尺度PFSの信頼性と妥当性が確認され,癌患者の倦怠感には,行動,情緒,知覚,認知の4つの側面が深く関与していることが示唆された.

2.放射線治療中の癌患者の倦怠感は放射線治療をはじめて第1週目は倦怠感の出現はほとんどないが第2週目から第4週目にかけて倦怠感が上昇し,第4週にピークに達した.対象者の86%に軽度から重度の倦怠感の出現が見られた.

3.倦怠感が強いと感情障害や抑鬱傾向も強く,倦怠感と精神的要因との関連性が示唆された.

以上より,放射線治療中の癌患者の倦怠感の出現パターンおよび精神的要因との関連性が明らかになり,それを考慮に入れた倦怠感の定期的アセスメントおよび精神的サポートを含めた看護援助の重要性が示唆された.

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1999 一般社団法人 日本がん看護学会
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