日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
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13 巻, 2 号
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原著
  • 新貝 夫弥子, 渋谷 優子
    1999 年13 巻2 号 p. 38-47
    発行日: 1999年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,がん性疼痛に対し患者がどのように疼痛評価し,どのような対処行動を取っているかを明らかにすることである.対象は,おもに外来でモルヒネを使用したがん性疼痛コントロールを行っている女性のがん患者35名.データは,がん性疼痛を評価するためのCleeland C.S.らによって開発されたBPI(Brief Pain Inventory)とがん性疼痛に対する対処行動を評価するために独自に作成した質問用紙の2種類の測定用具を使用し,面接調査によって収集した.その結果を以下に記す.

    1.1日の最も長い時間体験する平均の痛みと生活障害は疼痛評価の重要な指標である.モルヒネの使用量と疼痛評価及び生活障害に有意差はなかった.

    2.痛みの増強に比例して生活全体の障害の程度が高くなり,障害される項目も増加する.

    3.痛みの強い対象ほどタッチングを必要としている.がん性疼痛に対する理学療法や認知・行動的アプローチは,まだ十分に行われていない.

    4.忍耐,麻薬に対する偏見,支援者との問題,高齢は,疼痛コントロールを阻害する原因となりうる.

    5.対象は,医師や看護婦とコミュニケーションが十分に図れていたが,家族に対して症状を軽く訴える傾向があった.意志決定は家族及び看護婦の間では患者が,医師との間では医師が主導権を持っていた.

    以上から,がん性疼痛緩和にとって生活障害を軽減することが重要であり,患者の主体性を育てる患者教育と家族教育が課題であることが示唆された.

  • 神里 みどり
    1999 年13 巻2 号 p. 48-59
    発行日: 1999年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,放射線治療中の癌患者の倦怠感をアセスメントし,倦怠感の出現の有無・程度・パターンを明らかにすること,また倦怠感と精神的要因との関連性を検討することである.調査対象者は,これから放射線治療を受ける癌患者35名で,放射線治療をはじめる週を第1週としてその後各週に1回,計4週間にわたって経時的に倦怠感の測定とその関連要因に関して面接調査と参加観察を行った.さらに,対照群として,放射線未治療者30名の倦怠感を測定し,対象群と比較検討した.倦怠感の測定に米国で開発された倦怠感尺度Piper Fatigue Scale(PFS)を邦訳して使用し,その他にも2種類の倦怠感尺度を用いた.その結果,以下の知見が得られた.

    1.本研究において邦訳した倦怠感尺度PFSの信頼性と妥当性が確認され,癌患者の倦怠感には,行動,情緒,知覚,認知の4つの側面が深く関与していることが示唆された.

    2.放射線治療中の癌患者の倦怠感は放射線治療をはじめて第1週目は倦怠感の出現はほとんどないが第2週目から第4週目にかけて倦怠感が上昇し,第4週にピークに達した.対象者の86%に軽度から重度の倦怠感の出現が見られた.

    3.倦怠感が強いと感情障害や抑鬱傾向も強く,倦怠感と精神的要因との関連性が示唆された.

    以上より,放射線治療中の癌患者の倦怠感の出現パターンおよび精神的要因との関連性が明らかになり,それを考慮に入れた倦怠感の定期的アセスメントおよび精神的サポートを含めた看護援助の重要性が示唆された.

  • ―末期がん患者と家族の意識―
    今村 由香, 小澤 竹俊, 宮下 光令, 河 正子, 小島 通代
    1999 年13 巻2 号 p. 60-68
    発行日: 1999年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,ホスピス相談外来を初回受診した末期がん患者と家族の実態とホスピス・緩和ケアについての情報提供に関する実態を明らかにすることである.調査対象者に対して調査票を用いた面接法ならびに調査票を配布し,郵送による回収を行った.対象者は有効回答が得られた患者13名(86.7%)と家族53名(91.4%)である.相談対象である患者には苦痛症状が多く出現しており,特に,家族が受診している場合には,患者の病状は進行している傾向にあった.また,外来を受診する患者と家族は痛みの出現の不安に加え,入院やその時期,相談場所の確保,緊急時の対応への不安や心配を高く示していた.さらに,患者と家族へのホスピス・緩和ケアについての情報提供は医療従事者が行っており,情報提供の時期は,患者と家族にとって遅い傾向にあることが示された.末期ケアにおける相談支援の必要性および治療効果の判定以前の早期から,患者の症状に合わせた情報提供の必要性が示唆された.

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