日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
Lennox-Gastaut症候群患者に対するプロポフォールを用いた静脈内鎮静法経験
酒井 有沙伊藤 みゆき岩重 春伽平川 景子塚脇 香苗宮下 直也砂田 勝久
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2018 年 39 巻 2 号 p. 143-147

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抄録

Lennox-Gastaut症候群(LGS)は,難治性のてんかん発作,精神遅滞を主徴とする疾患である.麻酔管理上の問題点として,てんかん発作の予防および麻酔薬と内服薬との相互作用に注意することが挙げられる.今回,LGS患者をプロポフォールのみで管理したので報告する.患者は,43歳女性.2歳時にLGSと診断され,カルバマゼピン,クロバザム,トピラマート,ルフィナミドが処方されている.開口保持困難のため,静脈内鎮静法下での治療を計画した.

初回麻酔前に小発作があり,導入前より傾眠傾向であった.静脈路確保後,プロポフォール20mgを投与しBIS値が60~70を示すように4mg/kg/hで維持した.術中,血圧変動や呼吸抑制は認められなかった.2回目の麻酔導入前は覚醒しており,プロポフォール50mg投与後にBIS値が40~60を示すように2~6mg/kg/hで維持した.2回ともてんかん発作は認められなかった.

ベンゾジアゼピン(BZ)はてんかん発作の予防に有効であり,本症例でもクロバザムを内服していた.フルマゼニルは,BZと競合的に拮抗する.したがって本症例にフルマゼニルを投与するとクロバザムの作用が減弱し発作を引き起こす可能性が考えられる.そこでBZの投与は避け,半減期の短いプロポフォールのみで管理した.またBISモニタは鎮静状態を把握でき脳波を連続でモニタするため,コミュニケーション困難を伴うてんかん患者の麻酔管理にも有用であった.

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© 2018 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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