表皮水疱症は皮膚粘膜の水疱形成を主徴とする遺伝性疾患である.水疱形成とその治癒に伴い,皮膚や粘膜の癒着や瘢痕化が生じることがある.口腔周囲では口腔前庭の狭小化や開口障害を呈することがあり,口腔清掃状態が不良となりやすい.エナメル質の形成不全も認めることがある.本邦では歯科的所見についての症例報告はあるものの,口腔内外の特徴と歯科的所見をまとめたものは少ない.今回われわれは,劣性栄養障害型表皮水疱症者の口腔内の所見について,全身的な特徴とともにまとめ,その実態を明らかにした.
大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部を受診した劣性栄養障害型表皮水疱症児者9名の受診時に得られた臨床データを用いた.
全身所見として,皮膚粘膜の潰瘍やびらんと,治癒に伴う瘢痕や癒着,拘縮がみられた.処置経過中に皮膚悪性腫瘍を生じた者もあった.口腔については,開口量は19.0±9.0mmと小さく,全例に口腔前庭の狭小化がみられた.平均う蝕経験歯数は14.3±8.4歯と全国平均の10.2±6.6歯を上回り,う蝕が多発する傾向にあった.88.9%にエナメル質形成不全がみられた.
劣性栄養障害型表皮水疱症では,口腔周囲の皮膚粘膜の損傷と治癒に伴う瘢痕化や拘縮により,開口量の減少や口腔前庭の狭小化をきたす.このため,口腔清掃が困難となりう蝕が多発する傾向にある.