日本障害者歯科学会雑誌
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臨床集計
歯科治療時の身体抑制法に関する保護者への意識調査
―全身麻酔・静脈内鎮静法が実施できない当センターにおいて―
立浪 康晴小笠原 正石川 亨大木 淳一川上 清志藤井 達郎佐伯 亮太宮本 暦岡宗 絢子岩坪 敬宗小池 充弘吉田 尚史向野 正子山越 智津子黒田 由香里大平 千尋城岸 美悠水野 二郎
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2020 年 41 巻 4 号 p. 382-390

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抄録

全身麻酔・静脈内鎮静法が実施できないセンターにおいて歯科治療時の身体抑制法に関する保護者へのアンケート調査を行い,配慮すべき事項について検討した.調査対象は,当センターへ通院中の障害者の保護者304名であった.受診を継続している患者の治療方針について改めて保護者へ説明したうえで,アンケートを依頼した.保護者に同意書にて「a.抑制下での治療を希望」「b.抑制しないでできる範囲の治療を希望」「c.第三次医療機関(大学病院など)への紹介を希望」のうち1つを選択させた.その後にアンケート用紙を配布し,記載を依頼した.アンケートは,①身体抑制法の経験,②抑制具を使用しての歯科治療希望,③治療方針へのさらなる希望,④身体抑制法についての意見・考えであった.

子どもが身体抑制法を経験した保護者は,89.1%が身体抑制法を希望し,肯定的に考えていた.しかし,すべての治療を身体抑制法で実施するものでなく,治療内容によっては希望しないと回答し,その考えはさまざまであった.身体抑制法を積極的にしたいと回答した保護者は,身体抑制法の経験が影響していた.障害者歯科臨床において保護者が歯科医療スタッフに望むことや心配なことをいつでも言える環境を整えること,保護者の考えを尊重し,治療方針を選択する機会を毎回提供すること,地域における障害者歯科の高次医療機関の確立が重要であると考えられた.

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