2022 年 43 巻 2 号 p. 101-108
在宅療養児が増加している現状において,徐々にではあるが,小児在宅歯科医療のさまざまな取り組みがされてきている.しかし,その歯科医療提供の実態の把握は十分ではない.そこで,神奈川県内の障害者歯科診療に携わる一次医療機関を対象に小児在宅歯科医療の実態と現状における問題点などを把握することで,課題の抽出と今後の取り組みを検討した.
対象となった753件中220件(回収率29.2%)から回答が得られた.一次医療機関で小児在宅医療を実施できている機関は少ない現状であった.85.5%の機関が多職種連携が必要であると回答し,連携すべき機関としては,「医療機関(医科)」が最も多く,次いで「福祉保健センター」「地域包括支援センター」の順であり,情報共有すべき職種としては,「医師」「訪問看護師」が上位を占めた.小児在宅歯科医療で提供できる歯科医療として「口腔ケア」が185件(84.1%)と最も多く,摂食嚥下機能療法は103件(46.8%)にとどまった.実施する際の問題点としては「マンパワー不足」「不測の事態への対応や責任問題が懸念される」などが多く挙げられた.研修会の参加を希望する割合は65.9%であった.小児在宅歯科医療では,患者のデマンドとニーズを把握したうえで,提供すべき処置を明確化する必要があると考えられた.また,必要な専門知識の充実や技術の普及に向けた研修会の開催,多職種連携が円滑に図れるような体制(仕組み)づくりが必要であると考えられた.