日本障害者歯科学会雑誌
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原著
脳性麻痺患者における固定性補綴治療後の抜歯リスク因子
眞方 信明田上 直美鮎瀬 てるみ切石 健輔鮎瀬 卓郎
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2022 年 43 巻 2 号 p. 83-89

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抄録

脳性麻痺患者の口腔内はその特性から衛生管理が困難で,う蝕や歯周疾患に罹患しやすく,外傷のリスクもあるため,固定性補綴装置にとっては過酷な環境といえる.本研究は,固定性補綴装置の支台歯が抜歯となる要因を特定することを目的に,支台歯の生存率とそのリスク因子について検討を行った.対象は1984年から2017年に特殊歯科総合治療部を受診し固定性補綴装置を装着した脳性麻痺患者35名の268支台歯とした.年齢,性別,合併疾患,補綴装置の種類,歯式,薬物的行動調整などに関するデータを収集し,カプランマイヤー生存曲線を描記し,共有フレイルティ分析を行い,有意水準を5%として信頼区間とともにハザード比の算出を行った.その結果,支台歯の10年生存率は92.1%,20年生存率は78.1%であった.ブリッジにおけるハザード比は単冠と比較して低く,0.35倍であった.脳性麻痺患者の固定性補綴装置の場合,特有の顎運動による強い応力が単冠では分散されず,それによる歯根破折が抜歯の原因となっていると考えられた.本研究の結果から脳性麻痺患者の欠損補綴法としてブリッジを選択することは支台歯の保存に有用であることが示唆された.

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