2025 年 46 巻 2 号 p. 115-123
比較的重度のチアノーゼ性先天性心疾患を有する知的能力障害者の歯科治療のための全身麻酔および周術期管理について報告し,歯科診療施設における適応と管理について考察した.
症例1,2は,Fontan手術を受けた患者で,肺高血圧症がなく肺血流量(肺/体血流バランス)が安定し,心不全が軽度であることから,心筋抑制の少ないミダゾラムおよびフェンタニルを用い,酸素およびセボフルランによる緩徐導入または意識下挿管にて麻酔を行った.呼吸管理は従圧式換気様式を行ったが,胸腔内圧の上昇から静脈還流量および肺血流量の低下による経皮的動脈血酸素飽和度の低下が推察されたため,補助呼吸にて良好に管理しえた.症例3はFallot四徴症の修復術後の患者で,肺動脈弁狭窄症のために右室負荷がみられ,肺血流量の減少も推察された.肺動脈弁置換術による右室負荷および肺血流量の改善を待って全身麻酔を行った.麻酔はミダゾラムおよびレミフェンタニルを用い,酸素およびセボフルランによる緩徐導入にて麻酔を行い,良好に管理しえた.
チアノーゼ性先天性心疾患患者の術前評価では,肺血流量を安定的に維持する観点で,術前評価および管理を行う.そのために,肺動脈圧ができるだけ正常値に近く安定していること,脱水がないことに留意する.Fontan循環では,循環体液量の過不足がないように輸液を行うこと,できるだけ補助呼吸で管理することが重要である.