2025 年 46 巻 2 号 p. 107-114
本症例は,障害者歯科診療を通じて,高齢脳性麻痺患者の生活の質の維持に寄与した地域における長期的な口腔ケアと歯科診療の一例である.患者は脳性麻痺があり,多数のう蝕を主訴として52歳で当センター初診となった.以降42年間にわたり継続的な歯科診療を受け,94歳現在で21歯を維持している.診療の継続には,家族と介護者の支援,医科との連携,障害者歯科診療を担う当センターの関与など,複合的な支援体制が寄与したと考えられる.障害者歯科診療の変遷を踏まえ,われわれは常に患者にとって最適な対応を模索しつつ,長期的な口腔ケアと歯科治療に取り組んできた.高齢脳性麻痺患者における口腔内変化や長期管理に関する報告は限られている.よって,本症例は今後の障害者歯科診療の実践と支援体制の構築に重要な知見を提供するものであると考える.