2025 年 46 巻 2 号 p. 91-97
障害児者は歯ブラシによるブラッシングスキルの獲得に苦慮することが多く,高い清掃効率の歯ブラシの選択が重要な対応の一つとなりうる.しかし,歯ブラシを選択するための客観的な指標はない.
歯ブラシの毛の硬さはJIS規格で,「かため」「ふつう」「やわらかめ」に分類され,家庭用品品質表示法でパッケージに記載され,誰もが購入時に確認できる.しかし,毛の硬さと清掃効率に関する近年の報告はない.そこで,本研究では毛の硬さの違いがブラッシングの清掃効率とストロークに与える影響について基礎研究を行った.
試験歯ブラシは同じヘッドサイズでメーカー表示の毛の硬さが,“かため”“ふつう”“やわらかめ”“特にやわらかめ”の4種の幅広植毛歯ブラシとし,清掃効率と歯ブラシの毛先が動くために必要なストロークである臨界ストロークを平面モデルで評価した.
毛が硬くなるほど清掃効率は高くなり,各歯ブラシの種類間で有意差を認めた(p<0.05).臨界ストロークは毛の硬い順に短く,“かため”とそれ以外のすべてと,“ふつう”と“特にやわらかめ”間に有意差を認めた(p<0.05).
平面モデルを用いて歯ブラシを評価したところ,毛が硬くなるにつれて清掃効率が高いこと,やわらかい毛では長いブラッシングストロークが必要であることが推察された.障害児者の場合,歯ブラシを大きく動かし続けられない場合も多く,各人の特性を考慮して歯ブラシ選択をする際に毛の硬さにも配慮が必要と示唆された.