応用地質
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岩石の破壊過程におけるき裂の発達とAE活動との関係について
今井 忠男杉本 文男鴨志田 直人山下 秀古住 光正
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2002 年 43 巻 1 号 p. 14-23

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抄録
地震学の分野では, 地震の規模と発生頻度との関係は, べき乗則であることが知られており, 地震の予測にあたっては, この地震規模頻度分布の傾き (|b|値) は有効なパラメータとされている. 岩石の破壊過程におけるAE活動においても, AE振幅頻度分布はべき乗則となり, この傾きは岩石破壊の予測に関して, 重要と考えられる. とくに, この傾きと岩石のき裂発達との関係が明らかとなれば, 精度の良い破壊予測法となると推測される.
本研究では, 岩石試験片を用いて, 圧縮破壊過程におけるAE振幅頻度分布の傾き (|b|値) について分析した. さらに, 試験後の試験片について, 薄片を作製しき裂の発達を観察した.
この結果, 岩石の破壊過程における|b|値は, 花崗岩と砂岩では破断前に低下するが, 大理石と凝灰岩ではあまり低下しないことがわかった. さらに, 破壊過程において, |b|値が低下する花崗岩と砂岩では, 粒子群を貫く大きなき裂が発達するが, |b|値が低下しない大理石では, 粒子内に密にき裂が発生し破断に至ることがわかった. また, 凝灰岩は破断面以外にき裂はほとんど発達しないことがわかった.
すなわち, 破壊過程において|b|値が低下する岩石では, |b|値の変化による破壊予測の可能性が示唆された.
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© 日本応用地質学会
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