2016 年 26 巻 2 号 p. 271-276
縦隔気管孔造設後に腕頭動脈出血を来し,血管内ステントグラフト留置にて止血を得られた症例を経験した。症例は61歳男性。頸部食道癌cT4N2M0に対し根治的CRTを施行し,一旦はCRを得たが治療後5か月で原発巣再発rT3N0M0を来し,咽頭喉頭頸部食道全摘出術,両側頸部郭清術,遊離空腸再建術とあわせて縦隔気管孔を造設した。術後10日目に縦隔気管孔の気管断端壊死を契機として腕頭動脈の露出を認めたため,壊死した気管を切除し大胸筋皮弁を充填し直した。しかし再手術後15日目,縦隔気管孔の腕頭動脈が露出していた部位付近から腕頭動脈出血を来した。一時止血を得た後に腕頭動脈内に血管内ステントグラフトを挿入し,救命し得た症例を経験したため報告する。