Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
ヤブツバキ‘玉之浦’花弁における白覆輪形成
立石 信峰尾崎 行生大久保 敬
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2010 年 79 巻 2 号 p. 207-214

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抄録

ヤブツバキ‘玉之浦’花弁における白覆輪形成機構を明らかにするために,色素学的および分子生物学的調査を行った.HPLC 分析により,‘玉之浦’花弁赤色部位には,野生ヤブツバキ花弁と同様に 2 種類のアントシアニン(cyanidin 3-glucoside と cyanidin 3-galactoside)が蓄積していたのに対し,白覆輪部位ではアントシアニンが蓄積していないことが明らかになり,白覆輪部位ではアントシアニン生合成経路が正常に機能していないことが示唆された.RT-PCR により,アントシアニン生合成酵素遺伝子の発現量を調査した.調査した遺伝子のうち,大部分の遺伝子は両花色部位において同程度の発現量を示したのに対し,chalcone synthase (CHS)の発現のみが白覆輪部位において著しく抑制されていた.5', 3' RACE 法を用いて CjCHS 遺伝子の cDNA 全長配列を決定した.CjCHS 遺伝子の推定アミノ酸配列は木本植物由来のそれと高い相同性を示した.cDNA を鋳型に用いた RT-PCR とゲノム DNA を鋳型に用いた PCR の結果,両花色部位間で PCR 産物の大きさ(遺伝子の長さ)に違いがみられなかったことから,白覆輪部位の CjCHS において転位因子の挿入や遺伝子重複が起こっていないことが示唆された.

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© 2010 園芸学会
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