Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
中国原産の完全甘ガキの甘渋性を支配する遺伝子に連鎖した分子マーカーの開発
池上 礼子江口 菜赤木 剛士佐藤 明彦山田 昌彦神崎 真哉北島 宜米森 敬三
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2011 年 80 巻 2 号 p. 150-155

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抄録
カキ品種は果実の脱渋性の違いにより,完全甘ガキ(PCNA),不完全甘ガキ(PVNA),不完全渋ガキ(PVA),完全渋ガキ(PCA)の 4 タイプに分類される.これらの 4 タイプのうち,樹上で安定して脱渋する PCNA が育種において最も重要である.日本の PCNA 品種の脱渋性は劣性形質であるが,中国の PCNA 品種である‘羅田甜柿’では優性であり,その形質を支配する CPCNA 遺伝子座は日本の PCNA 形質を支配する遺伝子座とは異なっている.中国タイプの PCNA 選抜のための分子マーカー開発する目的で,‘羅田甜柿’の F1 後代にバルク法を適用し amplified fragment length polymorphism(AFLP)分析を行った.384 のプライマーセットを分析し,優性の CPCNA 対立遺伝子に連鎖した 3 つの AFLP マーカー,EACT-MCCC-222(RO1),EGGC-MCTC-309(RO2),EGCC-MCGA-105(RO3)を得た.このうち,EGGC/MCTC-309(RO2)を sequence-characterized amplified region(SCAR)マーカー化した.F1 後代(n = 264)を用いた PCR 分析の結果,この SCAR マーカーの適合率は 94%であった.優性の CPCNA 対立遺伝子に強く連鎖した RO2 マーカーの多型は,調査した中国,韓国および日本の品種のなかで,中国の PCNA 品種である‘羅田甜柿’と‘天宝蓋’のみで検出された.これらの結果から,RO2 マーカーは CPCNA の形質をもつ新しい PCNA 品種の育種計画のための marker-assisted selection (MAS)に有効であることが示唆された.
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© 2011 園芸学会
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