抄録
パパイア‘Sunrise Solo’(両性品種)および‘Wonder Flare’(雌品種)の果実および種子生産性を改善する目的で,沖縄県の施設栽培条件下で,奇形花の発生率,果実および種子収量,花粉発芽能力および雌ずいの生殖機能に関する季節性を調査した.‘Sunrise Solo’における奇形花の発生率は,2 月~3 月(平均気温:14.6~16.8℃)および 12 月~1 月(16.9~18.1℃)には 10%以下であったが,7 月~10 月(25.6~30.5℃)には 42~66%に増加した.雌性不稔花率は,3 月~11 月(16.8~30.5℃)では 10%以下と低かったが,12 月~2 月(14.6~18.1℃)には 13~37%に増加した.果実および種子収量は,5 月(24.6℃)および 11 月(19.4℃)に受粉した小花で増加したが,1 月~3 月(14.6~18.1℃)および 7 月~9 月(28.2~30.5℃)に受粉した小花で減少した.4 月~6 月(22.2~27.2℃)および 10 月~11 月(19.4~25.6℃)における花粉発芽率は 52~87%で高く,花粉管長(208~272 μm)も長く伸長した.しかし,1 月~3 月(14.6~18.1℃)の低温期に花粉発芽率(5.1~32%)は低下し,花粉管長(63~134 μm)も短かった.また,7 月~9 月(28.2~30.5℃)の高温期に発芽花粉は観察されなかった.これら花粉発芽性の季節変動の結果は,温度制御条件下における花粉発芽率の結果とほぼ一致した.すなわち,温度制御条件下では,花粉発芽率は 20~25℃ で高く(72~80%),15℃ 以下および 30℃ 以上で低かった(0~56%).一方,‘Sunrise Solo’および‘Wonder Flare’の雌ずいは,低温(16.7℃)および高温期(29.5~30.5℃)でもその生殖機能を保持した.すなわち,高温期に野外栽培株から採取した花粉(発芽率:約 35%)または低温および高温期に氷点下温度で保存した花粉を用いて授粉することにより,果実および種子収量が向上した.以上の結果から,パパイアの果実および種子生産は,花粉発芽に不適な低温または高温期においても,保存花粉による授粉で,改善可能であることが示された.