Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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原著論文
ホルクロルフェニュロンにより誘導されるトレニアの副花冠の形態に対するホメオティック遺伝子の役割の解析
仁木 智哉平井 雅代仁木 朋子菅野 明西島 隆明
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2012 年 81 巻 2 号 p. 204-212

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抄録

CPPU 処理したトレニアで発生する幅広い形と細長い形の 2 種類の形態の副花冠について,組織の特徴の解析およびホメオティック遺伝子の発現がこれらの形態の違いに果たす役割について解析を行った.花弁と類似した形態の幅広い副花冠では,表皮細胞の形および維管束の分布パターンとも花弁に近い特徴を持っていたが,雄ずいに近い形態の細長い副花冠では,表皮細胞は花弁に近い形のものから雄ずいに近い形を持つものまで存在し,また,維管束については分岐が少なく,雄ずいに近い分布パターンを持っていた.副花冠の形成初期におけるホメオティック遺伝子の発現パターンを in situ hybridization により解析したところ,幅広い副花冠では花弁と同様に class A (Torenia fournieri SQUAMOSATfSQUA)) および class B 遺伝子 (TfDEFICIENSTfDEF),TfGLOBOSATfGLO)) の発現が見られただけでなく,先端部では class C 遺伝子 (TfPLENA1TfPLE1),TfFARINELLITfFAR)) の発現も見られた.一方,細長い副花冠では class B 遺伝子の発現は見られたが,class A 遺伝子および class C 遺伝子の TfPLE1 の発現は周縁部のみで見られ,花弁と雄ずいの中間的な発現パターンを示した.発達したつぼみを用いた定量 PCR による発現解析においては,幅広い副花冠では花弁と同様に class A および class B 遺伝子の発現量が高く,class C 遺伝子の発現量は低かったのに対し,細長い副花冠では class B 遺伝子の発現量は高かったが,class A 遺伝子の発現は雄ずいと同程度に,また class C 遺伝子の発現は花弁と同程度に低かった.以上の結果から,ホメオティック遺伝子の発現パターンが,幅広い副花冠では組織・形態的に花弁と同様の特徴を持ち,また,細長い副花冠では花弁と雄ずいの特徴が混在する原因であることが示された.さらに,副花冠のホメオティック遺伝子の発現パターンは,器官の発生位置によって決定され,副花冠の形態の制御に重要な役割を果たしていると考えられた.

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© 2012 園芸学会
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