抄録
本研究では,ホワイトアスパラガスの主要な苦み成分であるサポニン化合物,中でも含有量が特に多いプロトディオシンの生合成に関わる要因を明らかにすることを目的として,ストレス応答に関わるとされるジャスモン酸メチル(MeJM)散布処理が若茎中のプロトディオシン含量に及ぼす影響について検討した.MeJM 処理は,春季の半促成栽培および冬季の伏せ込み促成栽培において,フィルム被覆法によって軟白したホワイトアスパラガス若茎への散布によって行った.若茎中のプロトディオシン含量は,本研究にて確立した蒸発光散乱検出器(ELSD)を装備した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析手法により定量した.その結果,若茎中のプロトディオシンは主に基部に蓄積されていた.また,半促成栽培,伏せ込み促成栽培のどちらの実験においても,MeJM 散布処理区のプロトディオシン含量は有意に高く,さらに伏せ込み促成栽培における実験においては濃度依存的に有意に含量が高くなった.以上の結果から,ホワイトアスパラガスの若茎におけるプロトディオシンなどのサポニン化合物の生合成は,ジャスモン酸が関与するストレス応答反応によって促進され,その結果ほろ苦さが強くなるものと推測された.また,MeJM 散布処理により,フィルム被覆法で軟白を行うホワイトアスパラガスのほろ苦さを人為的に制御できる可能性が示された.