抄録
接ぎ木による日本のトマト品種(Solanum lycopersicum)の収量の向上と収量変化の要因を明らかにするため,日本およびオランダのトマト品種を両国の台木品種に接ぎ木し,収量と乾物生産について調査した.その結果,日本品種‘桃太郎ヨーク’の果実収量は,共台の場合よりもオランダ台木品種‘Maxifort’(S. lycopersicum × S. habrochaites)に接いだ場合に有意に(約 30%)高かった.果実乾物重収量と地上部総乾物生産重との間には有意な強い相関がみられ,地上部総乾物生産重と光利用効率との間にも有意な非常に強い相関がみられた.一方,光利用効率と,最大光合成速度,気孔コンダクタンスおよび吸光係数との間には有意な相関はみられなかった.‘桃太郎ヨーク’の気孔コンダクタンスは,定植 57 日および 119 日後とも台木品種によって異なったものの,最大光合成速度は定植 57 日および 119 日後とも台木の違いによる有意な差はみられなかった.以上より,オランダ台木品種‘Maxifort’への接ぎ木によって‘桃太郎ヨーク’の収量が増加すること,この収量増加は総乾物生産および光利用効率の向上によることが明らかになった.