水文・水資源学会誌
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都市表面の対流熱伝達率に関する既往研究のレビュー
萩島 理谷本 潤成田 健一
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2004 年 17 巻 5 号 p. 536-554

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抄録
本稿では,近年ヒートアイランド現象など都市域に特有の現象をより高精度に予測することを目的として開発されている都市キャノピーモデルに必要な都市表面熱伝達率の既往研究についてレビューを行った.まず,伝達率の測定方法の概要及び長所と短所について概観した.次に観測・実験研究の主な成果について報告した.その要旨は次の3点である.
1) 実大建物表面の熱伝達率の観測例は多数あるが,研究者間でU-h の関係式は異なっている.その要因としては,建物形状,風速定義高さ,表面温度と気温の差ΔT などが考えられるが,各因子の影響を定量的に検討した例は殆ど無い.
2) 縮小模型実験については,中立条件下で立方体や2次元リブの規則的配列の粗度群に対して,粗度形状と伝達率の関係や面内伝達率分布についての報告が複数行われている.
3) 縮小模型実験で得られる伝達率を実大スケールに外挿できるか否かについて,観測データに基づく検証は行われていない.
最後に,都市表面熱伝達率のモデルとして,大規模水平屋根を対象としたClear et al(2003),自然対流下の粗面を対象としたKondo et al(1997),中立条件下の2Dキャノピーを対象としたHarman et al(2004)の3つのモデルの紹介を行った.
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© 2004 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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