水文・水資源学会誌
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原著論文
河道モデルと沿岸流動モデルの統合とその必要性に関する検討
中山 恵介Dutta DUSHMANTA田中 岳岡田 知也
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2005 年 18 巻 4 号 p. 390-400

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抄録

本論文では,統合型沿岸流動モデルを作成することによるメリットを示すために,河道モデルと沿岸流動モデルを統合させ,東京湾におけるその影響評価を行った.統合型沿岸流動モデルとは,水文モデル,沿岸流動モデル,気象モデルにより構成されるものを示す.閉鎖性内湾において長期における物質循環に大きな役割を果たしているのは,湾内の密度を卓越的に決定している塩分であると言える.そこで本論文では,統合型沿岸流動モデルの必要性を検討するために,水文モデル中に含むことができる河道モデルと沿岸流動モデルを組み合わせ,湾内における塩分濃度に関する検討を行う.河川流量を2種類,潮汐振幅を3種類与え,感潮域におけるバックウォーターの影響を考慮した場合としない場合の湾内平均塩分による海水交換を検討した.その結果,河川流量を一定値として潮汐による河川流量の変化を考慮した場合,河道モデルより与えられる河川流量が,潮汐により生じる河川流量の最大値より小さい場合,湾内平均塩分が大きく低下してゆくことが分かった.それゆえ,河口での塩分フラックスを高精度で再現するためには,感潮域の特徴を含むことができる河道モデルと沿岸流動モデルの統合が必要であることが分かった.

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© 2005 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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