水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
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18 巻 , 4 号
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原著論文
  • 町田 功
    2005 年 18 巻 4 号 p. 349-361
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    ジャーナル フリー
    本論では2つの小規模な島嶼における,降水の酸素・水素安定同位体比の時空間変動を扱っている.1997~1998年の三宅島における降水の季節変動プロットは,δダイヤグラム上で半時計周りに回る歪な円を描いた.この傾向は東京での変動と類似していることから,両地点は同一気団の影響下にあることが示唆された.特に冬期にδ値が低下する現象について,レイリーモデルを用いた解析をおこない,日本海側の降雪現象が影響を与えていることを示した.一方,八丈島における降水の同位体比の季節変動は小さく,この理由として,異なる水蒸気の混入が考えられる.水蒸気塊の起源については,同位体比計算モデルを用いた解析をおこない,八丈島近海である可能性を述べた.
  • 高島 和夫, 村田 文人, 早川 典生
    2005 年 18 巻 4 号 p. 362-369
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    ジャーナル フリー
    本研究は,横田切れ (明治29年 (1896) 7月洪水) 以降の明治30年 (1897) から昭和30年 (1955) までの59年間の年最大二日雨量について,近年の代表的な台風性と前線性の複数洪水の中から,降雨特性が類似した近年洪水を選定し雨量の時間分布を仮定して,流出計算により年最大流量を推定するとともに,推定した流量群に,先に推定した横田切れ洪水最大流量,昭和31年 (1956) から現在までの年最大流量をくわえ,連続した105個の標本をもとに水文統計処理し,横田切れ洪水の流量確率を求め,横田切れの洪水の位置づけを明らかにするものである.
  • 川原谷 浩, 松田 英裕, 松葉谷 治
    2005 年 18 巻 4 号 p. 370-381
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    ジャーナル フリー
    河川源流域における降水の河川への流出過程を理解することを目的として,降水と河川水の酸素及び水素同位体比ならびにCl- 及びSO42- 濃度を測定した結果,次のことが判明した.降水については,林内では林外よりも同位体比,化学成分濃度の両方が高くなり,樹葉上での蒸発あるいは付着した乾性降下物の溶出によると考えられる.河川水については,同位体比及び化学成分濃度が年間を通してほぼ一定であり,流出する地下水の貯留量は十分に大きく均一であることを示す.しかし,融雪期や短期間に著しく多量の降水があった時は,それらの影響が河川水に現れ,特に化学成分濃度に強く影響する.降水の直接流出成分の割合を河川水の同位体比あるいは化学成分濃度の変化から推定する場合,基底流出する地下水成分について降水開始前の河川水の値,また直接流出する降水成分について降水(林外)の平均値を用いると,同位体比による値と化学成分濃度による値に差が生じ,2つの流出成分の濃度設定が適当でないことを示す.また,降水の流出割合が最高に達した後の減少期にはCl- 濃度とSO42- 濃度による推定値に差が生じ,第3成分の流出が示唆される.
  • 金  〓植(〓は王偏に文), 竹中 千里, 吉田 恭司, 朴 昊澤
    2005 年 18 巻 4 号 p. 382-389
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    ジャーナル フリー
    本研究では,愛知県内の花崗岩地域の二次林から流出する渓流水のpHが中性に近い値であるにもかかわらず,高い濃度のAlを含むことを見出し,そのAl流出の化学的な特徴を明らかにすることを目的として,湧水と渓流水の溶存Alと他の溶存成分の関係,および表層土壌の化学性について調べた。湧水,渓流水の平均pH値は6.09,6.44であり,0.45μmメンブレインフィルタでろ過した湧水,渓流水の平均溶存Al濃度はそれぞれ66,41μmol/Lであった。このような中性に近いpHの渓流水としては,きわめて高い濃度のAlが存在することが明らかとなった。有機態Alの指標である溶存有機炭素(DOC)と溶存Al濃度との間には関係は見られなかった。また,溶存AlとFe濃度との高い相関には見られたが,Siとの間には相関が見られなかった。一方,渓流周辺の表面土壌には,水溶性Al濃度が非常に高い値を示す試料があり,溶存AlとFe,Si濃度の間には高い相関関係が認められた。これらの結果は,渓流水と湧水のAlがケイ酸塩鉱物の風化によって流出していること,さらには無機態コロイド状Alで存在している可能性を示している.
  • 中山 恵介, Dutta DUSHMANTA, 田中 岳, 岡田 知也
    2005 年 18 巻 4 号 p. 390-400
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    ジャーナル フリー
    本論文では,統合型沿岸流動モデルを作成することによるメリットを示すために,河道モデルと沿岸流動モデルを統合させ,東京湾におけるその影響評価を行った.統合型沿岸流動モデルとは,水文モデル,沿岸流動モデル,気象モデルにより構成されるものを示す.閉鎖性内湾において長期における物質循環に大きな役割を果たしているのは,湾内の密度を卓越的に決定している塩分であると言える.そこで本論文では,統合型沿岸流動モデルの必要性を検討するために,水文モデル中に含むことができる河道モデルと沿岸流動モデルを組み合わせ,湾内における塩分濃度に関する検討を行う.河川流量を2種類,潮汐振幅を3種類与え,感潮域におけるバックウォーターの影響を考慮した場合としない場合の湾内平均塩分による海水交換を検討した.その結果,河川流量を一定値として潮汐による河川流量の変化を考慮した場合,河道モデルより与えられる河川流量が,潮汐により生じる河川流量の最大値より小さい場合,湾内平均塩分が大きく低下してゆくことが分かった.それゆえ,河口での塩分フラックスを高精度で再現するためには,感潮域の特徴を含むことができる河道モデルと沿岸流動モデルの統合が必要であることが分かった.
  • 徳本 家康, 取出 伸夫, 井上 光弘
    2005 年 18 巻 4 号 p. 401-410
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    ジャーナル フリー
    団粒構造を持つ黒ボク土を対象に,不飽和および飽和状態の分散係数 D を求め,黒ボク土の分散長 λ の平均間隙流速 v と体積含水率 θ への依存性を調べた.そして団粒構造を持たない砂丘砂の結果と比較することにより,団粒構造の水分および溶質流れに及ぼす影響について考察した.黒ボク土の水分特性曲線は,空気侵入圧h=-15 cmとh=-3,160 cmにおいて,2段階に水分量が大きく減少する階段状の曲線を示した.飽和のθ=0.74 cm3 cm-3に対して団粒の体積含水率は0.5 cm3 cm-3程度,団粒半径は0.1 mm程度と推定された.水分フラックスq =146-3,085 cm d-1の飽和流れにおいては,λv にほぼ比例して増加し,最大2 cm以上になった.これは団粒内外の溶質交換が原因である.また比較的早い溶質交換のため,測定したブレイクスルーカーブ(BTC)に対する移流分散式(CDE)の適合は,水分フラックスにかかわらず良かった.一方,不飽和流れでは,θ の減少に伴い団粒間間隙の流れの影響は小さくなり,λ は減少した.そして団粒内部の溶質分散特性が卓越したθ=0.5-0.6 cm3 cm-3の範囲では,λ=0.2 cm程度で一定となった.不飽和流れにおいてもCDEの適合が良いのは,団粒内部の比較的均質な流れが原因と考えられた.
  • 島村 雄一, 泉 岳樹, 松山 洋
    2005 年 18 巻 4 号 p. 411-423
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    ジャーナル フリー
    山地積雪水当量の標高に伴う線形増加は,森林限界より低い標高帯でのスノーサーベイから得られた知見であり,森林限界より高い標高帯へ外挿して流域全体の積雪水当量を推定した場合の影響は明らかでない.この影響を評価するため,2002年と2003年の融雪期における新潟県巻機山を対象に,森林限界の上下でスノーサーベイを実施した.積雪水当量は,森林限界より低い標高帯では標高に伴い線形増加したが,森林限界より高い標高帯では急激に減少した.次に,流域全体の積雪水当量を推定する際に,森林限界より高い標高帯の積雪水当量を,森林限界より低い標高帯の線形増加を外挿した場合と観測値を当てはめた場合とを比較した.ここでは六日町より上流の魚野川流域を対象とし,積雪域の分布は衛星画像解析から求めた.両者の違いは,流域を集中型で扱う場合流域平均で8~12%になり,降水量や河川流量の観測誤差と同じ程度であった.しかしながら,流域を分布型で扱う場合,稜線上では300%以上の違いになる場所があった.また,対象流域における森林限界より高い標高帯では,卓越風向に対する風衝斜面が多いため,積雪の移送に関して収支が閉じないことを示した.
  • 牧野 育代, 松永 恒雄, 梅干野 晁
    2005 年 18 巻 4 号 p. 424-434
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    ジャーナル フリー
    関東山地の水道水源林内における渓流水を対象として,その水質および水質形成を明らかにすることを目的に,土地被覆が等しく森林地帯である複数の地質において2年間の定点水質観測を行った.その結果,土壌通過水を源とする渓流水の水質はCa2とHCO3-が多く,重炭酸カルシウム(Ca(HCO3)2)型の傾向を示した.次に,主要イオン類による地球化学的検討を行い,それぞれの地質おいて卓越する水質形成機構を推測した.地球化学的に説明のつかなかったNO3-とCl-は,大気降下物,植生及び気温の要因を検討した.Cl-はそのほとんどが大気降下物由来であると推定された.NO3-は,温度による影響,そして,石灰岩が及ぼす間接的な土壌の肥沃化が考えられ,特定の地質による濃度増加効果が示唆された.また,“植生の相違”では,植生の立地条件や林相等の他の要因の影響が大きいことが予測され,これらを考慮した解析が必要と考えられた.
研究ノート
  • 澤野 真治, 小松 光, 鈴木 雅一
    2005 年 18 巻 4 号 p. 435-440
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    ジャーナル フリー
    日本の森林は農地・都市域などの他の土地利用に比べて高標高地に分布している.また,降水量は標高とともに増加するという観測事例が報告されている,これらのことから,森林の降水量は多いと予想される.ところが,森林の年降水量が農地・都市域と比べてどれだけ多いのか,日本全域を対象として定量的に検討した例は無い.そこで,本研究ではGISを用い,森林の年降水量が農地・都市域の年降水量とどのくらい異なるかを調べた.
    その結果,土地利用ごとの年降水量は,森林は1900.7 mm,農地は1565.7 mm,そして都市域では1575.3 mmであった.森林は農地・都市域と比べて年降水量が約330 mm多かった.この原因は,森林が農地・都市域に比べて高標高地に分布していることと,森林において降水量が標高と共に増加することの2点であることが確認された.よって,森林における流出・蒸発散の農地・都市域との違いを議論する際には,森林と農地・都市域の間に見られた降水量の違いを考慮する必要があると考えられる.
総 説
  • 葛葉 泰久, 小松 陽介, 友杉 邦雄, 岸井 徳雄
    2005 年 18 巻 4 号 p. 441-458
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    ジャーナル フリー
    地域総合化,地域頻度解析,スケーリングといったような理論は,欧米や諸外国では,洪水予測のために1950年代以降,さかんに研究されてきたが,日本の水文学の分野では,今まであまり一般的ではなかった.そして,この分野の研究で最もよく使われる,平均年最大流量と流域面積を表した曲線も,しばしば,洪水頻度解析を目的とはしていないクリーガー曲線の類と誤解されてしまう.著者らが解説しようとしているこれらの理論は,水文観測データが少ない観測点のデータを総合化したり,データの豊富な地点からデータのない地点にデータを移送したりすることにより,T年確率のクオンタイルを求めるのに非常に役立ち,PUB(未観測流域での水文予測)や,洪水頻度問題の解となるものであろう.スケーリングには,simple scaling とmultiscalingという二つの枠組みがあり,前者は直感的に理解しやすく,後者は比較的数学的で難解である.著者らは,それらの基礎理論を解説し,また,米国で開発された手法を引き合いにして,PUBへの展望を述べようと思う.
  • 浅野 友子, 内田 太郎, ジェフリー マクドネル
    2005 年 18 巻 4 号 p. 459-468
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/07
    ジャーナル フリー
    1930年代のHortonの一連の研究以降,斜面水文に関わる研究者は,“斜面に降った雨はどのように流出するのか”という課題に取り組んできた.1950~60年代には,塚本やHewlettら森林水文学者がHortonの概念に変わるものとして変動流出域概念(variable source area concept)を提唱し,これは今日,数多くの雨水流出モデルの基礎的な仮定・近似となっている.しかしながら,その後,特に環太平洋地域で行われた自然斜面での物理水文観測と同位体や水質等を用いたトレーサー手法を組み合わせた観測研究により,長期間斜面中に貯留されていた水が降雨時に素早く流出し,大きなハイドログラフの変動を生じさせることが明らかとなり,変動流出域概念は雨水流出過程の実態を十分に表現していないことが示されてきた.そこで,本総説はMcDonnell(2003, Hydrological Processes, 17, pp. 1869-1875)を基に,1960年代以降の斜面水文観測の成果について概観し,変動流出域概念と自然斜面での観測成果のギャップを検討した.さらに,近年の観測結果を雨水流出モデルへ反映する試みについて紹介した上で,山地水文過程の概念化の課題を整理し,今後の方向性について提言した.
技術・調査報告
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