団粒構造を持つ黒ボク土を対象に,不飽和および飽和状態の分散係数
D を求め,黒ボク土の分散長
λ の平均間隙流速
v と体積含水率
θ への依存性を調べた.そして団粒構造を持たない砂丘砂の結果と比較することにより,団粒構造の水分および溶質流れに及ぼす影響について考察した.黒ボク土の水分特性曲線は,空気侵入圧
h=-15 cmと
h=-3,160 cmにおいて,2段階に水分量が大きく減少する階段状の曲線を示した.飽和の
θ=0.74 cm
3 cm
-3に対して団粒の体積含水率は0.5 cm
3 cm
-3程度,団粒半径は0.1 mm程度と推定された.水分フラックス
q =146-3,085 cm d
-1の飽和流れにおいては,
λ は
v にほぼ比例して増加し,最大2 cm以上になった.これは団粒内外の溶質交換が原因である.また比較的早い溶質交換のため,測定したブレイクスルーカーブ(BTC)に対する移流分散式(CDE)の適合は,水分フラックスにかかわらず良かった.一方,不飽和流れでは,
θ の減少に伴い団粒間間隙の流れの影響は小さくなり,
λ は減少した.そして団粒内部の溶質分散特性が卓越した
θ=0.5-0.6 cm
3 cm
-3の範囲では,
λ=0.2 cm程度で一定となった.不飽和流れにおいてもCDEの適合が良いのは,団粒内部の比較的均質な流れが原因と考えられた.
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