水文・水資源学会誌
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総 説
Variable Source Area Conceptの次なる斜面水文過程の概念構築に向けた近年の試み:斜面に降った雨はどこへ行くか?
浅野 友子内田 太郎ジェフリー マクドネル
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2005 年 18 巻 4 号 p. 459-468

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抄録
1930年代のHortonの一連の研究以降,斜面水文に関わる研究者は,“斜面に降った雨はどのように流出するのか”という課題に取り組んできた.1950~60年代には,塚本やHewlettら森林水文学者がHortonの概念に変わるものとして変動流出域概念(variable source area concept)を提唱し,これは今日,数多くの雨水流出モデルの基礎的な仮定・近似となっている.しかしながら,その後,特に環太平洋地域で行われた自然斜面での物理水文観測と同位体や水質等を用いたトレーサー手法を組み合わせた観測研究により,長期間斜面中に貯留されていた水が降雨時に素早く流出し,大きなハイドログラフの変動を生じさせることが明らかとなり,変動流出域概念は雨水流出過程の実態を十分に表現していないことが示されてきた.そこで,本総説はMcDonnell(2003, Hydrological Processes, 17, pp. 1869-1875)を基に,1960年代以降の斜面水文観測の成果について概観し,変動流出域概念と自然斜面での観測成果のギャップを検討した.さらに,近年の観測結果を雨水流出モデルへ反映する試みについて紹介した上で,山地水文過程の概念化の課題を整理し,今後の方向性について提言した.
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© 2005 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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