水文・水資源学会誌
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原著論文
定常地下水流動解析に基づく手取川扇状地における灌漑期の地下水位に 影響を与える要因の評価
岩﨑 有美尾崎 正志中村 公人堀野 治彦川島 茂人
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2013 年 26 巻 2 号 p. 99-113

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抄録
 石川県手取川扇状地の持続的な地下水利用を検討していくため,地下水位に影響を与える要因の解明及びその定量的な評価を実施した.経時的な地下水位や地下水位分布の観測から,地下水位は水田地帯特有の季節変動を示し,灌漑期には非灌漑期と比較して約5 m高くなることから,水田灌漑が地下水位に与える影響が大きいことがわかった.非灌漑期において扇頂から扇央部の地下水位分布が1993~2009年の期間で約5 m低下したことが明らかになった.さらに,地下水位と揚水量の経年的な変化傾向が概ね一致すること,手取川からの伏没水が地下水涵養に寄与することがわかった.次に,現地観測に基づき灌漑期の地下水位の経年変化を再現する地下水流動モデルを構築した.地下水流動解析の結果から,扇状地内でも扇頂部及び手取川に近い扇央部での水田面積,揚水量の変化が該当領域とその周辺の地下水位に大きく影響することを示した.水田面積が減少した場合に,現況の地下水位を維持するための揚水規制を検討し,同面積率が30 %以上減少すると揚水規制では地下水位の維持が困難であることを示した.最後に,手取川河川水位が地下水位に与える影響を定量的に明らかにした.
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© 2013 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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