水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
26 巻 , 2 号
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原著論文
  • 友正 達美, 佐藤 政良, 藤本 直也, 吉村 亜希子
    2013 年 26 巻 2 号 p. 75-84
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル フリー
     水資源の効率的配分方法の一つとして,市場メカニズムを利用した水利転用が注目されている.しかしながら,農業用水は地域における水循環を形成する等,一般的な資源と異なる特徴を持っていることから,それをどのように取り扱うかが,水利転用において重要な課題となる.そこで本研究では,ニュージーランド南島の灌漑地区内農地間での水利転用と,米国カリフォルニア州の水銀行における地域間での水利転用の制度を取り上げ,農業用水の持つ特性が,水の自由な取引をどのように制約しているかという視点から分析した.二つの事例ではいずれも,自由な市場取引ではなく,地域の水資源管理を司る公的機関が主体となって,個別の水利転用を仲介し,その際,転用の技術的な可否の検討に加え,地域経済への影響,野生生物への影響等,農業用水の持つ多面的機能の保全を要件とした審査が行われている.周辺との諸関係の発生が不可避である農業用水の転用の実現にとって,その規模の大小に関わらず,社会的受容が大きな要因となり,自由な市場取引は制限される.
  • 糸数 哲, 小杉 賢一朗, 恩田 裕一, 蔵治 光一郎 , 田中 延亮, 後藤 太成, 太田 岳史, 水山 高久
    2013 年 26 巻 2 号 p. 85-98
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル フリー
     地球温暖化による大雨日数の増加傾向を背景に,森林の洪水緩和機能が注目されている.本研究では,植生回復段階の異なる花崗岩流域において,総雨量150 mm以下の通常降雨イベントを対象としてパラメータを同定したタンクモデルを用いて,東海豪雨イベント(総雨量457 mm)のハイドログラフの再現計算を試みた.対象としたのは,裸地流域,裸地解消から約20年経過した植生回復流域,および森林流域の3流域である.その結果,裸地流域および植生回復流域のハイドログラフの再現精度は良好であったが,森林流域のハイドログラフはピーク流量が過小評価となった.土層の発達が進んでいない,裸地流域や植生回復流域では,通常の降雨規模においても地表流成分が卓越することが考えられ,通常降雨イベントで同定したタンクモデルで豪雨イベントのハイドログラフを精度良く再現できることが示された.一方,土層が厚い森林流域は通常の降雨規模では地表流はほとんど発生しないが,豪雨イベント時には地表流成分が増大すると考えられ,通常降雨イベントで同定したタンクモデルでは豪雨イベントのハイドログラフが再現できず,ピーク流量を過小評価することが示された.
  • 岩﨑 有美, 尾崎 正志, 中村 公人, 堀野 治彦, 川島 茂人
    2013 年 26 巻 2 号 p. 99-113
    発行日: 2013/03/05
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル フリー
     石川県手取川扇状地の持続的な地下水利用を検討していくため,地下水位に影響を与える要因の解明及びその定量的な評価を実施した.経時的な地下水位や地下水位分布の観測から,地下水位は水田地帯特有の季節変動を示し,灌漑期には非灌漑期と比較して約5 m高くなることから,水田灌漑が地下水位に与える影響が大きいことがわかった.非灌漑期において扇頂から扇央部の地下水位分布が1993~2009年の期間で約5 m低下したことが明らかになった.さらに,地下水位と揚水量の経年的な変化傾向が概ね一致すること,手取川からの伏没水が地下水涵養に寄与することがわかった.次に,現地観測に基づき灌漑期の地下水位の経年変化を再現する地下水流動モデルを構築した.地下水流動解析の結果から,扇状地内でも扇頂部及び手取川に近い扇央部での水田面積,揚水量の変化が該当領域とその周辺の地下水位に大きく影響することを示した.水田面積が減少した場合に,現況の地下水位を維持するための揚水規制を検討し,同面積率が30 %以上減少すると揚水規制では地下水位の維持が困難であることを示した.最後に,手取川河川水位が地下水位に与える影響を定量的に明らかにした.
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