水文・水資源学会誌
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水理計算に基づく大規模河道網の洪水流出特性に関する研究
志村 光一大原 憲明松木 浩志山田 正
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2001 年 14 巻 3 号 p. 217-228

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抄録

著者らは物理的観点と手法に立脚した, 降雨の予測手法および洪水予測システムの構築を目指し研究を行っている.本論文では山地小流域における降雨流出の物理過程を踏まえたモデルを新たに提案している.このモデルを用いた解析結果と大規模河道網に関する一次元不定流数値解析を組み合わせ, これをパソコンレベルで計算し総合的な洪水流出計算手法を提案している.これにより利根川スケールの流域全体における洪水予測システムがパソコンレベルで可能となることを示した.本研究において山地流域の斜面流出は, 河道近傍の湿潤領域のみから流出すると考えており, その流出特性は斜面勾配, 斜面長, 表層土の不飽和透水係数, 有効空隙率, 表層土層厚および保水能の分布形状を表現する二つの定数により決定される.大流域河道網に一次元不定流解析を適用させ, シミュレーションを行った結果, 下流に位置する流量観測地点のハイドログラフの形状は, 支川の本川に対する位置関係や上流端の流入ハイドログラフのタイミングによって大まかに決定される.河床粗度を人為的に変えて計算を行い, 河床粗度の増加に伴い流量ハイドログラフよりも水位 (水深) ハイドログラフに大きく影響する等, いくつかの水文学的に重要な知見を得た.

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