水文・水資源学会誌
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分光センサーによるアオコ濃度の推定
伊藤 健吾大槻 恭一神近 牧男
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1996 年 9 巻 5 号 p. 457-462

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抄録
水中で三次元に分布しているアオコの動態を的確に捉えるには,水中にアオコを感知できるセンサーを設置する必要がある.そこで本研究では,アオコに含まれるフィコビリンPhycobilin系色素に注目した光センサーを制作した.センサーは,フォトダイオードと干渉フィルターを組み合わせた感光部と標準光源で構成され,試料の透過光を分光測定できるようになっている.室内実験によってアオコ,アオミドロ,黒ボク土,酸化マグネシウム混濁液の吸光度を測定した結果,アオコとアオミドロは一般の植物と同様の吸光特性を示し, 800nmと550nmの吸光度の差からそれらの濃度が推定できることが明らかになった.また,アオコとアオミドロを分離して評価するため,アオコ特有の植物色素であるフィコビリン系色素の吸光作用に注目した結果,アオミドロでは変化の見られなかった670nmと550nmの吸光度の差からアオコ濃度が推定できた. 670nmと550nmの吸光度の差は,酸化マグネシウムなど植物プランクトン以外の浮遊物によっても生じるため,アオコ濃度の推定には, 800nmと550nmにおける一次分類と670nmと550nmにおける二次分類を合わせて行なう必要があるように思われる.
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