2021 年 17 巻 2 号 p. 2_113-2_125
青森県では,著者らが所属する機関を含む産学官金連携体制のもと,青森県産トラウトサーモンの養殖実証事業を推進している.本研究では,青森県産トラウトサーモンにおける海外市場の販路開拓の課題を明らかにする目的で,シンガポールを事例として,一般消費者及び小売・飲食店を対象としたマーケティング調査を実施した.その結果,シンガポールはアトランティックサーモンを主力としたマーケットではあるものの,色合い,脂肪を落としたヘルシーさ,安全安心さ,日本食に対する信頼性などに訴えかけることにより青森県産トラウトサーモンのマーケットへの参入は十分可能であることが明らかになった.また調査では,青森県産トラウトサーモンの提供商品形態や輸送・加工費用を想定した売価設定,増産に向けた県内養殖生産環境の整備,青森県の知名度の低さなどの課題についても明らかになった.以上のことから,青森県産トラウトサーモンの輸出促進のためには,マーケットイン型生産体制の強化を図っていく必要がある.