産学連携学
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17 巻, 2 号
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特集1 地方大学振興と地域産業創出の取組2
  • 小田 啓二, 千原 康生, 東 善和
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_1-2_8
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    本構想は医療機器開発のイノベーションを継続的に生み出すエコシステムを形成する新しい取組みである.産官学が連携し,人工島「ポートアイランド」内に医療機器の実証拠点であるリサーチホスピタルを設置し,先進医療機器の研究開発を行う.また,医療現場のニーズを的確にとらえ医療機器の開発を行う医工融合人材を育てて,医療産業の更なる発展と若者の地域就業・定着を促進することで,神戸市の経済のさらなる発展に貢献する.

  • 受田 浩之
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_9-2_21
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    高知県は単位面積当たりの農業産出額が日本一である.この優位性は施設園芸における精緻な栽培技術の確立や市場競争力の高い栽培品目に重点化したマーケティング戦略等に起因する.2018年から開始した「IoP (Internet of Plants) が導くNext次世代型施設園芸農業への進化」に関する高知県産学官の連携プロジェクトにおいては,これまでに確立された環境制御型農業をさらに進化・発展させ,IoT/AI技術を駆使することで環境データ,作業や市場データに加えて,これまでは全くブラックボックスであった植物の光合成や蒸散などの生理・生態に関するデータまでも見える化し,営農指導にまで活用できるIoPクラウドを構築している.10年間のプロジェクト期間において,IoPクラウドを確立するための技術開発と現場への実装,IoP施設園芸農業を実践,普及していく中核農業者の育成,さらにその教育・研究環境を充実させるための地方大学の改革を進めると共に,本プロジェクトを自走させる組織としてIoP推進機構の立ち上げと運営を進める.本稿においては,本プロジェクトの立ち上げの経緯とプロジェクトマネジメントの仕組み,並びにPDCAについて,事業責任者の立場から詳述する.なお本研究は,内閣府地方大学・地域産業創生交付金の助成を受けたものである.

  • 榊 純一
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_22-2_29
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    秋田大学は,電動化システムの研究開発による地域産業創生を行う新たな産学官連携拠点として,電動化システム共同研究センターを設立した.センターはその傘下に,国内でも有数のシステム試験施設を竣工する予定であり,その設備を一般にも開放する計画である.加えて,センターは人財開発部を有しており,秋田県の将来を担う若年層への教育や社会人のリカレント教育も実施する.本稿では当該センターを中心とする活動状況を紹介する.

  • 久保 康弘
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_30-2_39
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    徳島県では内閣府「地方大学・地域産業創生交付金」の採択を受け,本県の強みである「光」を中核として産学官金が連携・協働し,「光応用専門人材の育成」や「新たな光源の研究開発・応用製品の開発」に取り組んでいる.本稿では徳島県や徳島大学を取り巻く状況,次世代“光”を選択した経緯,「創造的超高齢社会」というコンセプトの立案や事業採択後の種々の取組について概説する.

特集2 産学連携によるリカレント教育の取組
  • 西村 訓弘
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_40-2_46
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    Society 5.0 の実現など社会が変化し,新しい時代を迎えるにあたり「創り出す人へと覚醒させる」ための教育が求められている.著者は地域企業の経営者層へのリカレント教育に取り組んでいる.経営者が自身の考えを客観的に捉えることで新事業につながる.また,経営者が互いに切磋琢磨し,地域社会が変化することも期待される.本稿では,地域イノベーションという概念に基づく地域産業界の中核人材に対するリカレント教育を紹介する.また,10年以上行ってきた一連の活動を通して形成した次の中核人材を生み出し続ける地域エコシステムについて説明したい.

  • ―セクター間連携に従事するURA育成の試み―
    伊藤 正実
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_47-2_62
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    平成26年度に文部科学省科学技術人材育成コンソーシアムの構築事業に採択された“多能工型研究支援人材養成拠点”では研究支援人材 (URA) を雇用するとともに,組織内定着を目的に,その育成プログラムを実施した.プログラムの特徴は,セクター間連携に焦点をあてて,この業務に必要な職業能力を要素分解して,カリキュラムとしている.また,この事業を通して,セクター間の関係調整の能動性がURAの実績に寄与することをあきらかにした.

  • 敷田 麻実
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_63-2_75
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    リカレント教育は「社会人の学び直し」の重要性が強調されている現代社会において,学校教育と並ぶ社会的な課題となっている.多様な支援や制度の整備が進む中,社会人が学び直した成果を生かすことができる産業界と,教育サービス提供の新たな機会と考える高等教育機関の関心は高い.また,大学の持つ特定の専門分野の知見を生かした効果的な連携の可能性に関心が集まっている.本論文では,2000年代以降に普及してきた観光分野におけるリカレント教育が持つ課題と可能性を整理し,産業界と教育機関がどのように連携することができるか,石川県で行われている観光のリカレント教育における産学連携の具体的な事例から,①カリキュラムの内容,②教授法や教育手法,③マネジメントの視点で考察した.

  • ―小樽商科大学ビジネススクールの取組事例―
    藤原 健祐, 鈴木 哲平, 椎名 希美, 青木 智大, 小笠原 克彦
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_76-2_90
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    人生100年時代や技術革新の進展を見据え,近年,高等教育機関での社会人再教育 (リカレント教育) の社会的ニーズが高まっている.本稿では,多様なリカレント教育プログラムの創出および既存プログラムの内容やその運営に寄与することを目的として,小樽商科大学ビジネススクール (OBS) におけるヘルスケア関連リカレント教育の取組事例を紹介する.ヘルスケア領域では,医療・介護サービスといった専門領域に特化した知識・技術を有するだけではなく,経営学やマネジメントの知識を含め複眼的な視点を有する人材が求められている状況にあり,OBSでは正課科目としての特殊講義や履修証明プログラムをリカレント教育プログラムとして社会人の方々に開放し,人材育成とビジネス・エコシステムの構築を推進している.

論文
  • 酒匂 孝之, 内平 直志
    原稿種別: 論文
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_91-2_101
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    大学や公的研究機関で生み出された研究成果をもとにイノベーションを生み出すためには,研究成果を産業界へ技術移転し事業化する必要があるが,研究成果は暗黙的であり情報の粘着性が高く,技術の送り手と受け手の間には情報の非対称性が存在することからその実現には大きな壁が存在する.

    本研究では産学共同研究のうち事業化に至った事例について概念実証の観点から分析することで,研究成果の事業化が成功するために必要な知識共有について考察した.事例から産学連携研究を行うことで,ステークホルダー間で発生する情報の非対称性の創造的解消を行われ,研究成果の事業化が促進されることが確認できた.また,ビジネス的課題を起点として研究目標を設定することやそれらをステークホルダー間で共有することが事業化の促進には有効であることが明らかになった.粘着性の解消においてはvon Hippelの示した粘着性を解消する活動を産学共同研究においても意識して計画を進めることが,技術移転を促進し事業化に貢献することが明らかになった.

研究ノート
事例研究
  • 福田 覚, 鈴木 宏介, 泉 ひかり, 前田 穣, 永長 一茂, 中井 雄治, 前多 隼人, 岡村 恒一, 嵯峨 直恆
    原稿種別: 事例研究
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_113-2_125
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    青森県では,著者らが所属する機関を含む産学官金連携体制のもと,青森県産トラウトサーモンの養殖実証事業を推進している.本研究では,青森県産トラウトサーモンにおける海外市場の販路開拓の課題を明らかにする目的で,シンガポールを事例として,一般消費者及び小売・飲食店を対象としたマーケティング調査を実施した.その結果,シンガポールはアトランティックサーモンを主力としたマーケットではあるものの,色合い,脂肪を落としたヘルシーさ,安全安心さ,日本食に対する信頼性などに訴えかけることにより青森県産トラウトサーモンのマーケットへの参入は十分可能であることが明らかになった.また調査では,青森県産トラウトサーモンの提供商品形態や輸送・加工費用を想定した売価設定,増産に向けた県内養殖生産環境の整備,青森県の知名度の低さなどの課題についても明らかになった.以上のことから,青森県産トラウトサーモンの輸出促進のためには,マーケットイン型生産体制の強化を図っていく必要がある.

  • 平見 尚隆, 中野 博子
    原稿種別: 事例研究
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_126-2_138
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,日本における国際産学連携活動の活性化を図るための課題を特定し,そのための施策を提示することである.本稿では,日本で伸び悩んでいる国際産学連携の現状を踏まえ,その典型的な例として広島大学の過去の事例を包括的に精査することで,その課題の抽出と分析を行った.分析の際には,イノベーションエコシステムが発達していると言われるイギリスのケンブリッジ大学関係者に対して2015年に行った聞き取り調査結果と同大学のAnn Dowling教授によるイギリス政府への産学連携強化に関する答申である“Dowling Review”の内容を適時参照することで,検証を試みた.この分析で,過去投資に結びついた例は個人対個人の信頼関係から発展したものが多いこと,一方,大学と企業という組織対組織で成功しているケースはセミナーなどのイベント後の確実なフォローアップ活動等を通じて信頼感が醸成されていることがわかった.今後の国際産学活動を活性化していくためには,このフォローアップを確実に行い,信頼感を醸成していくことが重要であり,その具体化が課題であることが示された.

  • 飯田 香緒里, 渡邉 守, 古澤 智子, 谷関 知佳, 矢田 博昭, 安田 章夫
    原稿種別: 事例報告
    2021 年 17 巻 2 号 p. 2_139-2_146
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/08/16
    ジャーナル フリー

    社会に大きな変革が起きている時代,大学と企業との連携によるオープンイノベーションを活用し,大学,企業がそれぞれ単独ではなし得なかった分野にスピード感を持って取り組むことが求められて来ており,その重要性も益々増している.行政のイノベーション施策等では,『本格的な産学連携』として,組織間連携の必要性が提唱されているが,その有用性の検証,『本格的な産学連携』の具体的な方法論の共有は十分なされていない.そこで,本稿では,東京医科歯科大学とソニーの組織間連携について,設立の経緯,実施しているプログラム,連携の手法,成果事例を紹介した上で,組織間連携の有用性を検証しつつ,イノベーション創出における『本格的な産学連携』の意義を考察する.

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