大学や公的研究機関で生み出された研究成果をもとにイノベーションを生み出すためには,研究成果を産業界へ技術移転し事業化する必要があるが,研究成果は暗黙的であり情報の粘着性が高く,技術の送り手と受け手の間には情報の非対称性が存在することからその実現には大きな壁が存在する.
本研究では産学共同研究のうち事業化に至った事例について概念実証の観点から分析することで,研究成果の事業化が成功するために必要な知識共有について考察した.事例から産学連携研究を行うことで,ステークホルダー間で発生する情報の非対称性の創造的解消を行われ,研究成果の事業化が促進されることが確認できた.また,ビジネス的課題を起点として研究目標を設定することやそれらをステークホルダー間で共有することが事業化の促進には有効であることが明らかになった.粘着性の解消においてはvon Hippelの示した粘着性を解消する活動を産学共同研究においても意識して計画を進めることが,技術移転を促進し事業化に貢献することが明らかになった.
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