抄録
【目的】体幹部へのマッサージによる下腿への影響について、NIRS(Near-infrared spectroscopy: 近 赤外線分光法 ) による筋酸素化動態の変化を検討した研究はこれまでみられない。本研究の目的は、 健康成人に対する体幹部へのマッサージが下腿の筋血流動態への影響について NIRS を用いて検討 することである。
【方法】対象は、健康成人 15 人(男性 10 人、女性 5 人、平均年齢 29.8 ± 9.8 歳)とした。研究デ ザインは、介入とコントロールの 2 群の比較によるクロスオーバー法を用いたランダム化比較試 験である。2 群の実験間隔は 1 週間以上あけた。介入は、腹臥位での頸肩背腰殿部へのマッサージ
(軽擦法、揉捏法、圧迫法、叩打法)15 分間とした。またコントロールは、腹臥位での安静 15 分 間とした。測定項目は、右下腿三頭筋部の総ヘモグロビン(Total Hb)、酸素化ヘモグロビン(oxy Hb)、脱酸素化ヘモグロビン(deoxy Hb)とし、NIRS を用いて測定した。また、心拍上昇幅(臥 位心拍と立位心拍の差)、皮膚温(左右母指球、左右下腿後面、左右足底)とした。なお、測定は、 介入前、介入直後、5 分後、10 分後に行った。群間および群内比較を行い、有意水準は 5%未満と した。
【結果】Total Hb、oxy Hb は、マッサージ群において介入前と比較して介入 10 分後で有意に上昇 した(P < 0.05)。deoxy Hb、皮膚温、心拍上昇幅に群間および群内で有意差はみられなかった
(P > 0.05)。
【結語】体幹へのマッサージは、下腿の筋酸素化動態に影響を及ぼす可能性があるが、この筋酸素
化動態の変化は、心臓自律神経系とは異なる機序が存在することを示唆した。