抄録
今回我々は3例の炎症性筋線維芽細胞性腫瘍を経験した.症例1は1歳,男児の肝原発の症例である.貧血,発熱により発症した.肝右葉後区域に巨大腫瘤を形成しており,AFPの上昇はなく良性腫瘍が疑われたが,肝芽種も否定できないため,外科的切除を行った.症例2は1歳,男児で反復する腸重積として発症し,精査により回盲部に腫瘤形成を認め,切除した.症例3は4歳,女児.血便で発症し,精査にて直腸に腫瘍を認めたため,経肛門的に切除したが局所再発を来し,ステロイド治療などを試みたが,最終的に再手術を施行した.いずれも病理診断は炎症性筋線維芽細胞性腫瘍であった.本疾患は臨床的には良性と考えてよいものから低悪性度のもの,あるいは転移,再発を来す高悪性度のものまで広いスペクトラムをもつため,組織学的な評価によるgradingが治療において重要である.近年報告されている遺伝子異常が病因あるいは予後因子としてどの程度関与しているかを解明することが今後の課題である.