日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
出生前診断された腹壁異常症例における治療方針選択と予後に関する検討
臼井 規朗金川 武司神山 雅史谷 岳人福澤 正洋
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 46 巻 2 号 p. 229-234

詳細
抄録

【目的】出生前診断された臍帯ヘルニアや腹壁破裂などの腹壁異常を対象として,両親による治療方針選択の実態とその医学的・倫理的妥当性を検討した.【対象と方法】1994年から2008年までの間に,出生前診断後に当院で在胎中および周産期の管理や出生後の治療を受けた腹壁異常症例を対象に,両親の希望によって選択された治療方針を積極的方針と消極的方針に分け,診断週齢,診断名,重症度,染色体異常,合併奇形,剖検所見,転帰について後方視的に検討した.【結果】対象となった53例の内訳は,腹壁破裂13例,臍帯ヘルニア29例,body stalk anomaly 11例であった.両親によって選択された治療方針は,積極的方針29例,消極的方針23例で,未選択が1例であった.積極的方針が選択された29例のうち,2例が子宮内胎児死亡し,27例が出生した.全例に手術が行われ,4例が死亡した.消極的方針が選択された23例のうち,18例に人工妊娠中絶が行われ,1例が子宮内胎児死亡した.4例は出生後に緩和的または制限的治療が行われ死亡した.消極的方針選択例のうちbody stalk anomalyを含む19例は生存不能と思われた,臍帯ヘルニア単独で人工妊娠中絶が行われた4例は,必ずしも生存不能とは言えなかったが,全例ほぼ全肝が脱出した症例であり,生存できたとしてもQOLの著明な低下が予想された.【結論】両親によって消極的方針が選択された症例の多くは生存が見込めない症例であった.消極的方針選択例には生存の可能性のある症例も含まれていたが,総合的に判断して本症における両親による治療方針の選択は医学的・倫理的に概ね妥当であった.

著者関連情報
© 2010 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top