日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
原著
腹膜鞘状突起の閉鎖のみで水腫を切除しないabdominoscrotal hydrocele の新術式の評価
松川 泰廣
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 49 巻 7 号 p. 1196-1202

詳細
抄録
【目的】Abdominoscrotal hydrocele(以下ASH)の手術は,文献では,水腫の切除が必須とされている.われわれは,小児の陰囊水腫・精索水腫(以下水腫)が,腹膜鞘状突起(以下PV)の高位閉鎖のみで治癒することをこれまで報告してきた.ASH も,水腫を切除せずPV の閉鎖のみで治癒するのではないか,と考えた.この手術の詳細を提示し,結果からASH の病態を考察した.
【方法】12 例の男児ASH に対し,以下の手術を行った.水腫を穿刺し水腫液を排液した.鼠径部切開で精索を引き出し,内鼠径輪のレベルで,腹側に続く水腫とPV を同定し,一括して切離し,閉鎖した.4 例では,PV とPV・水腫の癒合共通壁と内精筋膜を一括閉鎖した.8 例では,PV と水腫全周と内精筋膜を一括閉鎖した.
【結果】全例がこの手術で合併症なく完治した.全例で,内鼠径輪レベルにPV を認めた.このレベルでは,精索内外の癒着が極めて強く,PV と水腫は強固に癒着し癒合共通壁をなし,両者の分離は不可能であった.
【結論】結果は,ASH は,小児の場合,水腫を残しても腹水の供給路を絶てば,治癒する事を示している.これは,ASH は,PV および癒合共通壁にあると思われる微細な交通路を介して腹腔と交通する,交通性水腫であることを意味する.提示した手術はminimum invasive な手技であり,小児のASH 手術の第1 選択として推奨できる.
著者関連情報
© 2013 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top