日本小児外科学会雑誌
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49 巻, 7 号
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おしらせ
追悼文
原著
  • 山下 達也, 野口 啓幸
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1187-1190
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】小児では膿瘍形成性虫垂炎(以下本症)に対して保存治療を行い症状が改善した場合,その後に待機的虫垂切除術を行うべきか否かは議論の余地がある.本症に対して待機的虫垂切除術を行う妥当性を検討するため,手術所見と切除標本の病理所見に主眼を置き自験例の臨床経過を考察した.
    【方法】2004 年4 月から2012 年2 月までに待機的虫垂切除術を施行した本症29 例を対象とし,後方視的に臨床経過を検討した.
    【結果】初診時年齢は平均8.2±3.3 歳であった.病脳期間は平均7.1±3.5 日,初期保存治療に要した入院期間は平均13.2±5.0 日であった.待機手術までの期間は平均114.9±26.6 日,初回保存治療を含めた総入院期間は平均22.1±5.6 日であった.創部感染,腹腔内膿瘍,腸閉塞やその他の合併症は1 例もなかった.手術時間は平均96.9±55.1 分であった.切除虫垂は14 例(48.2%)で虫垂内腔が狭小化しており,病理組織学的に14 例(48.2%)では炎症所見が消失していたが,15 例(51.7%)では急性炎症を認めた.
    【結論】本検討の切除標本では組織学的に急性炎症を認める症例があり,約半数に虫垂内腔の狭小化がみられた.この所見より虫垂炎再発のリスクを内包しているため,本症に対しては待機的虫垂切除を行うことが妥当であると思われた.
  • ―胸壁トレースによる測定―
    納所 洋, 植村 貞繁, 牟田 裕紀, 久山 寿子, 山本 真弓, 吉田 篤史
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1191-1195
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】漏斗胸に対して低侵襲なNuss 法が広く普及してきた.Ravitch 法ではなし得なかった矯正効果を明らかにするため,胸郭の形態変化を手術前後で測定し,比較検討を行った.
    【方法】当院でNuss 法を行った32 例を対象とした.手術時の年齢は平均11.3 歳(5 歳~38 歳),男女比は28:4 であった.手術直前・直後に,胸骨下端における前胸部の形状を,ORTHOGLASS®を用いて直接型取り,背面からの高さを測定した.測定部位は,胸郭の最陥凹部(D),右・左の胸郭頂部(RT・LT),右・左の胸郭頂部と端部の中点(RM・LM)の5 点とした.術前後の各点における変化率(術後値/術前値)を求め,形態の変化を検討した.また,最陥凹部の高さと左右頂部の平均の高さとの比(D÷{(RT+LT)÷2})を求め,術前値を陥凹率,術後値を突出率として,併せて評価した.
    【結果】各点での平均変化率は,D が1.308±0.109,RT が1.025±0.045,LT が1.018±0.055,RM が0.936±0.043,LM が0.937±0.037 であった.陥凹率は0.861±0.065 であり,突出率は1.097±0.045 であった.
    【結論】最陥凹部の挙上効果は極めて良好で,術後は胸郭頂部よりも高くなっていた.胸郭頂部の高さは変化がほとんどなく,その外側では高さが低くなっていた.すなわち,胸郭が一弦の弧を呈するように,陥凹面のみならず外側の急峻な彎曲も矯正されていた.Nuss 法は,Ravitch 法よりも良好な胸郭形態が得られる可能性がある.
  • 松川 泰廣
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1196-1202
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】Abdominoscrotal hydrocele(以下ASH)の手術は,文献では,水腫の切除が必須とされている.われわれは,小児の陰囊水腫・精索水腫(以下水腫)が,腹膜鞘状突起(以下PV)の高位閉鎖のみで治癒することをこれまで報告してきた.ASH も,水腫を切除せずPV の閉鎖のみで治癒するのではないか,と考えた.この手術の詳細を提示し,結果からASH の病態を考察した.
    【方法】12 例の男児ASH に対し,以下の手術を行った.水腫を穿刺し水腫液を排液した.鼠径部切開で精索を引き出し,内鼠径輪のレベルで,腹側に続く水腫とPV を同定し,一括して切離し,閉鎖した.4 例では,PV とPV・水腫の癒合共通壁と内精筋膜を一括閉鎖した.8 例では,PV と水腫全周と内精筋膜を一括閉鎖した.
    【結果】全例がこの手術で合併症なく完治した.全例で,内鼠径輪レベルにPV を認めた.このレベルでは,精索内外の癒着が極めて強く,PV と水腫は強固に癒着し癒合共通壁をなし,両者の分離は不可能であった.
    【結論】結果は,ASH は,小児の場合,水腫を残しても腹水の供給路を絶てば,治癒する事を示している.これは,ASH は,PV および癒合共通壁にあると思われる微細な交通路を介して腹腔と交通する,交通性水腫であることを意味する.提示した手術はminimum invasive な手技であり,小児のASH 手術の第1 選択として推奨できる.
  • 服部 健吾, 弓場 吉哲, 佐藤 正人, 宮内 雄也
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1203-1208
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】直腸粘膜生検によるHirschsprung 病(以下H 病)の病理診断において,アセチルコリンエステラーゼ染色(acetylcholinesterase histochemistry;以下AChE 染色)は最も正診率が高いとされる.一方で近年,正常結腸の粘膜下・筋層の神経節細胞や内因性神経線維に陽性を示すcalretinin 免疫染色(calretinin immunohistochemistry;以下CR 染色)の同診断における有用性が指摘されてきている.今回,両染色の比較を中心に同診断におけるCR 染色の有用性を検討した.
    【方法】2011 年4 月から2012 年3 月までの間に当科でH 病を疑い直腸粘膜生検を施行し,その標本に対してAChE 染色とCR 染色を併施した症例を対象に,その所見を後方視的に検討した.
    【結果】対象は手術となった新生児4 症例,再手術となった3 歳児例,さらに手術とはならなかった乳児3 症例の合計8 症例であった.後に手術にてH 病との確定診断を得た5 症例ではいずれもAChE 染色陽性,CR 染色陰性であった.但しそのうちの2 症例は1 回目の生検ではAChE 染色およびCR 染色がともに陰性であったために確定診断に至らず,再度生検を施行してAChE 染色陽性の結果を得た.手術とならなかった3 症例はいずれも1 回目の生検にてAChE 染色陰性,CR 染色陽性の結果を得た.
    【結論】H 病直腸粘膜生検の病理診断においてCR 染色はAChE 染色評価困難例における補助診断として特に有用であり,CR 染色を追加することで不要な再生検を防げた可能性がある.
  • ―女性医師79名に対するアンケート調査―
    星野 真由美, 渡邊 揚介, 後藤 博志, 星 玲奈, 蘇我 晶子, 杉藤 公信, 池田 太郎, 越永 従道
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1209-1216
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】女性医師を対象としたワークライフバランスに関するアンケート調査の結果を検討し,女性外科医の就労支援における今後の課題について考察した.
    【方法】東京都立大塚病院に勤務する女性医師79 名を対象にアンケート用紙を配布し,無記名式での回答を回収し集計した.
    【結果】アンケート回収率は73.4%であった.既婚者は65.5%であり,子供のいる女性医師は43.1%であった.非常勤医師の66.7%が子供のいる女性医師であり,子供のいる女性医師の41.7%が非常勤医師であった.男性医師との対等性では,未婚女性医師よりも既婚女性医師において,不等であると回答する割合が高かった.共働き世帯での就労環境の配偶者との対等性では,子供のいる女性医師の58.3%が不等であると回答した.91.7%が配偶者の育児協力・支援を得られていると回答したが,41.7%が配偶者の育児協力・支援について不満であると回答した.育児中の女性医師の継続就労に必要な条件に,子供のいる女性医師の84.0%が「女性医師本人のモチベーション・意欲」と回答し,ついで「託児施設の充実」および「配偶者の理解と協力」と回答した女性医師が同率の68.0%であった.
    【結論】育児中の女性外科医のキャリアアップには,本人のモチベーション・意欲は必要不可欠であるが,指導者や同僚,家族がよき理解者となり,個々の女性医師が考える育児と仕事のバランスや家庭的背景などに合わせて柔軟な対応をすることも望まれる.男性を中心とした日本社会全体の意識改革は最も重要であり,妊娠・出産・育児を考慮した専門医制度や学会併設託児所の整備なども今後の課題である.
  • 中原 さおり, 松本 順子, 市瀬 茉里, 畑中 玲, 武山 絵里子, 与田 仁志, 武村 民子, 石田 和夫
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1217-1223
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】臍帯潰瘍は胎児上部消化管閉鎖症に合併し,ひとたび臍帯からの出血が起こると,高頻度に子宮内胎児死亡や児の重度障害を起こすことが知られている.原因として胎児の吐物による臍帯のワルトンゼリー変性の可能性が挙げられているが,詳細はいまだ不明である.胎児吐物中の膵酵素がワルトンゼリー変性に関与する可能性を探るために,羊水中の膵酵素濃度の上昇の有無を調べた.
    【方法】2009 年7 月から2011 年6 月までに当センターで経験した上部消化管閉鎖症6 例(A 群)とこれらを伴わない羊水過多症6 例(B 群),計12 例の羊水中の胆汁由来物質(総ビリルビン,直接ビリルビン,胆汁酸),および膵酵素(膵アミラーゼ,リパーゼ,膵フォスフォリパーゼA2,トリプシン)の濃度を測定した.
    【結果】A 群では膵アミラーゼを除く膵酵素の異常高値を認めた.具体的にはB 群の膵アミラーゼ9 IU/ l,リパーゼ3.5 IU/ l,膵フォスフォリパーゼA2 99 ng/dl,トリプシン170 ng/ml(それぞれ中央値)に対し,A 群6 例の中央値はそれぞれ16.5 IU/ l,4,055 IU/ l,63,050 ng/dl,30,400 ng/ml であった.
    【結論】限られた症例数ではあるが,臍帯潰瘍を合併することが知られている十二指腸閉鎖症および空腸閉鎖症の羊水中では,膵アミラーゼを除く膵酵素の濃度が著明に上昇していることが明らかとなった.羊水中の膵酵素濃度の上昇が臍帯潰瘍発生に関与する可能性があると考えられる.
  • 森田 圭一, 福本 弘二, 宮野 剛, 矢本 真也, 納所 洋, 三宅 啓, 金城 昌克, 漆原 直人
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1224-1228
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】小児良性卵巣腫瘍の外科治療では,腫瘍の根治性に加えて患側卵巣の温存が求められる.当施設で行っている小児良性卵巣腫瘍に対する腹腔鏡補助下腫瘍核出術の有用性について検討を行った.
    【方法】2010 年8 月~2013 年3 月に当施設で腹腔鏡補助下腫瘍核出術を施行した15 歳以下の良性卵巣腫瘍症例を対象とし,診療録をもとにして後方視的に検討を行った.手術は,初めに腹腔鏡で腫瘍と対側卵巣を観察し,腫瘍茎捻転症例では捻転解除を行う.次に恥骨上の小開腹創から腫瘍の囊胞部分を穿刺し内容液を吸引する.腫瘍と患側卵巣を体腔外へ引き出し,腫瘍を核出する.
    【結果】8 例(成熟奇形腫7 例,漿液囊胞腺腫1 例)に対して腹腔鏡補助下腫瘍核出術が行われた.手術では,全例で腹腔内への腫瘍内容漏出なく腫瘍の核出が可能であった.腫瘍茎捻転は2 例で認められた.1 例は一期的に捻転解除と腫瘍核出を行い,もう1 例では初回手術は腹腔鏡下の捻転解除のみとし5 日後の二期手術で腹腔鏡補助下に腫瘍核出を行った.術後平均入院期間は4.1 日(3 ~6 日間)であった.術後平均観察期間は17 か月(2 ~31 か月)で,成熟奇形腫の対側発症を1 例認めた以外に再発はなかった.
    【結論】腹腔鏡補助下腫瘍核出術は,小児良性卵巣腫瘍に対して腫瘍の根治性を保ち,卵巣を温存できる有用な手術法であると考えられる.
症例報告
  • 矢内 洋次, 濵田 吉則, 高田 晃平, 中村 有佑, 權 雅憲
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1229-1233
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は9 か月の男児.主訴は臍部膨隆と咳嗽.生下時から臍ヘルニアを指摘されていた.8 か月時,嵌頓の徒手整復後に紹介され,以降当院外来でフォロー中であった.2 週間後,臍の膨隆と不機嫌,上気道炎症状のため時間外で来院した.臍はピンポン球大に緊満し,徒手整復不能のため緊急手術を施行した.ヘルニア門は径15 mm,回腸末端,盲腸,虫垂が嵌頓し,色調はやや不良で囊内に漿液性腹水を認めた.ヘルニア門に切開を加えて腸管を還納し,臍ヘルニア修復術と皮弁による臍形成を行った.術後5 日目に退院し,術後4 年の現在まで再発なく経過良好である.小児臍ヘルニアは,自然閉鎖の可能性が高く乳児期は経過観察されることが多いが,まれに嵌頓することが知られている.自験例を含めた本邦14 例の臍ヘルニア嵌頓例を解析し,その成因について考察を加えて報告する.
  • 鈴木 淳一, 土岐 彰, 千葉 正博, 杉山 彰英, 菅沼 理江, 田中 彩, 中山 智理, 小嶌 智美, 大澤 俊亮, 渡井 有
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1234-1239
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は,現在14 歳の女児で,出生前診断で総排泄腔遺残症と診断され,在胎34 週で出生し完全内臓逆位・潜在性二分脊椎・左腎欠損・消化管重複症と診断された.3 歳時に直腸肛門奇形に対する根治術を行い,左側のミューラー管の形成不全とウォルフ管が遺残した結果出来た特殊な瘻管を合併切除した.4 歳時に膵・胆管合流異常症に伴う胆道拡張症を発症し肝外胆管切除,肝管空腸Roux-Y 吻合を行った.また,12 歳時に左伝音性難聴を指摘され,耳小骨奇形が原因と診断された.本症例の多発奇形は,Zic3 遺伝子が関連する内臓逆位・脊椎奇形・直腸肛門奇形(総排泄腔遺残症)とMURCS 連合であるミューラー管無形成(MU)・腎無形成(R)・頸胸椎異形成(CS)および伝音性難聴,さらに消化管重複症,膵・胆管合流異常症が複合して発症したと考えられた.今後,同様の多発奇形に関する発生機序の解明や遺伝子解析の一助になればと考え報告した.
  • 中畠 賢吾, 上原 秀一郎, 大植 孝治, 上野 豪久, 銭谷 昌弘, 奈良 啓悟, 曹 英樹, 臼井 規朗, 堀 由美子, 森井 英一
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1240-1243
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は7 歳男児.Lowe 症候群で当院小児科に通院中であった.近医での超音波検査で肝右葉に腫瘤を認めたため,当科に紹介となった.造影CT では辺縁が強く造影されたが,中心部は造影効果がなく,周囲に結節が多発していた.造影MRI ではT1 強調画像で低信号,T2 強調画像で高信号を呈した.血管内皮腫などの良性腫瘍が考えられた一方で,未分化肉腫などの悪性腫瘍も否定できず,右葉切除を施行し腫瘍を全摘した.病理組織診断では先天性血管腫または血管奇形の1 病変であるcapillary malformation の診断であった.小児の肝腫瘍においては画像検査や血液検査のみでは悪性腫瘍か否かを診断困難な症例も散見される.また血流豊富な症例では生検は困難であり,術前診断と治療方針の決定に難渋することもあるため,そのような症例では外科的切除を優先せざるを得ない症例もある.
  • 小川 美織, 前田 貢作, 小野 滋, 柳澤 智彦, 薄井 佳子, 馬場 勝尚, 辻 由貴
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1244-1247
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    胃軸捻転症を合併した横隔膜挙上症の1 例を経験したので報告する.症例は日齢4 の女児.日齢3 より哺乳低下,非胆汁性嘔吐を認め,胸部レントゲンで左横隔膜の挙上と胸腔内の胃泡を認めた.上部消化管造影検査で左胸腔内に脱出した胃の軸捻転を認めた.胃管にて減圧後,日齢8 に開腹下に左横隔膜縫縮術,胃前壁固定術を施行した.病理組織で横隔膜は部分的に骨格筋組織を認め,横隔膜挙上症に一致する所見であった.術後経過は良好であり,術後5 日目に退院となった.
  • 住田 亙, 渡辺 芳夫, 高須 英見, 大島 一夫
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1248-1251
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    結節性硬化症(以下,本症)に伴う消化管ポリープは随伴症状のひとつとされている.多くは無症状であるが,ポリポーシスからの出血で貧血を来した本症の1 例を経験したので報告する.症例は3 歳男児.新生児期から本症と診断され,他院で経過観察されていた.2 歳時に血便を認め,当院に紹介された.S 状結腸から直腸に無数のポリープが観察された.生検で過形成ポリープと診断され,経過観察となった.6 か月後の再検で同じ範囲にポリープが観察され,血便による貧血が鉄剤投与では改善困難なため,Soave 法によりポリープの存在する腸管を切除した.組織学的に過誤腫性ポリープと診断された.本症は大症状と小症状の組み合わせで診断され,小症状のひとつに直腸の過誤腫性ポリープがある.多くは無症状で治療の必要はないが,肉眼的血便や貧血をきたし出血のコントロールのために切除が必要となることもある.
  • 長谷川 真理子, 藤野 順子, 鈴木 信, 五十嵐 昭宏, 畑中 政博, 田原 和典, 石丸 由紀, 池田 均
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1252-1257
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は初診時5 歳7 か月の男児.食道閉鎖症および先天性食道狭窄症の術後で,食道の食物通過障害を繰り返すため諸検査を施行した.下部食道狭窄,胃食道逆流(以下,GER)および逆流性食道炎を認め,バルーン拡張術により逆流性食道炎に起因する下部食道狭窄が通過障害の主たる原因と診断した.7 歳6 か月,GER に対する逆流防止術を施行し,術後には食道の通過障害の改善を認めた.本症例は転居,転院を繰り返すなどの理由から逆流防止術の実施までに時間を要したが,手術の効果は良好でQOL も著明に改善した.食道閉鎖症および先天性食道狭窄症の術後にはGER を高頻度に合併することから,長期にわたる綿密かつ慎重なフォローアップが必要である.特に食物の通過障害をきたす症例では逆流防止術による積極的な治療を考慮すべきである.
  • 渡辺 栄一郎, 田中 潔, 高安 肇, 武田 憲子, 渡邊 昌彦
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1258-1263
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は1 歳3 か月男児.新生児期から認められた右陰囊腫脹が増大し1 か月時に当科を紹介受診した.初診時診察では両側の非交通性精巣水瘤を認め経過観察とした.7 か月時の超音波検査にて両陰囊から腹腔内に突出する巨大水瘤を認め両側abdominoscrotal hydrocele(以下ASH)と診断した.両側とも精巣は外鼠径輪に位置していた.1 歳2 か月時のMRI にて長径右18 cm,左10 cm のダンベル型腫瘤を認め,右側は水腎症と水尿管を合併していた.その後左側水瘤は縮小するも右側水瘤は増大し1 歳3 か月時に鼠径管アプローチにて両側水瘤根治術と精巣固定術を施行した.手術では右側水瘤は大きく腹側に伸展していたが腹腔内とは交通せず,水瘤壁は精巣動静脈と精管の周囲を一部残し摘出した.右精巣は細長く変形していた.左側水瘤も腹腔内との交通は認められなかった.巨大ASH は水腎・水尿管,精巣圧排等の合併症を起こすことがあり早期手術が望ましい.
  • 岩出 珠幾, 高見澤 滋, 畑田 智子, 好沢 克
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1264-1268
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は日齢0 の男児.在胎38 週3 日,2,430 g で出生.臍帯ヘルニアと診断され当院へ搬送.ヘルニア囊が破裂し,腸管の脱出を認めた.脱出腸管は,回盲部より約5 cm 口側で回腸が離断,盲腸の穿孔を認め,穿孔した盲腸からバウヒン弁が露出していた.また,臍帯に連続する5 cm 大のメッケル憩室を認めた.腸管吻合および修復が複数個所になるためストーマ造設を行う方針としたが,整容性を考慮しメッケル憩室切除断端を双孔式のストーマとして臍に造設した.術後2 日目から経口摂取を開始し,日齢18 にストーマ閉鎖術およびダイヤモンド型皮膚切開と3 枚皮弁による臍形成術を行った.日齢30 に退院.退院後も臍は陥凹し整容性は保たれている.ストーマ造設が必要な臍帯内ヘルニアに対して臍部にストーマを造設し,ストーマ閉鎖時に臍形成術を同時に行うことにより手術創を減らすことができるため有用な方法と思われた.
  • 林 憲吾, 廣谷 太一, 石川 暢己, 下竹 孝志
    2013 年 49 巻 7 号 p. 1269-1272
    発行日: 2013/12/20
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
    今回我々は,6 歳で甲状腺全摘出術を施行した多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia 以下MEN)2B 型の1 例を経験したので報告する.症例は乳児期から便秘症をきたしていた女児で,6 歳になり眼瞼や口唇の肥厚性変化,舌の多発性結節に気づかれ精査を進めた.身体所見や画像検査では頸部に明確な腫瘍は証明されなかった.しかしカルシトニン分泌刺激試験が陽性,RET 遺伝子の点突然変異が確認されたことによりMEN2B と診断した.甲状腺全摘出術+頸部リンパ節郭清術を施行し,甲状腺両葉に多発性の髄様癌が確認され,リンパ節転移は陰性であった.術後経過は順調で,術後の血中カルシトニン値はゼロレベルとなり再発徴候は認めていない.本症は稀な疾患であるが,特徴的な身体所見や臨床経過から早期に発見できる可能性があり,便秘症にて外来フォロー中の患児に初期徴候がないか注意深く身体所見を診察することが重要と考えられた.
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