抄録
小児の直腸杙創は比較的まれである.今回われわれは,尿路系に損傷を伴った直腸杙創の1 例を経験したので報告する.症例は11 歳男児.椅子の背もたれの上に立っていたところ,椅子が破損し転落.会陰部に破損した椅子の木片が刺入した.家族にて木片は抜去され,前医に救急搬送された.大腸内視鏡で径2 cm の腹膜外直腸穿通を認め,精査・加療目的で当院に転院搬送された.CT で直腸・精囊・膀胱損傷を認め,受傷後8 時間で緊急手術を施行した.試験腹腔鏡で,膀胱穿孔を認めたため,腹腔鏡下に膀胱壁を縫合閉鎖し,S 状結腸人工肛門を造設した.術後経過は良好である.腹腔内臓器損傷の検索・治療に腹腔鏡が有用であった.直腸杙創に対する腹腔鏡手術の報告は少なく,文献的考察をまじえ報告する.