抄録
幼児肝未分化胎児性肉腫に対し腫瘍全摘後,補助化学療法を施行し経過良好な症例について報告する.症例は3 歳の男児.発熱,嘔吐を主訴に来院し,右上腹部に小児頭大の腫瘤を触知した.α-fetoprotein(AFP)は正常範囲内であった.入院後も腫瘤は増大傾向を認め,腫瘍全摘出術の方針で肝部分切除術を行った.病理組織学診断は肝未分化胎児性肉腫で,術後補助化学療法を施行した.術後の画像検査ではCT・MRI・PET-CT のいずれも異常所見は認めなかった.近年,肝未分化胎児性肉腫の報告は散見されるようになり,その治療ならびに予後は飛躍的に向上しているが,特異的腫瘍マーカーや画像所見がなく,術後の評価法や治療法は確立されているとは言えない.本症例においても特異的所見はなく再発や転移の評価に苦慮しながら現在フォローを続けている.