日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
症例報告
生体部分肝移植後早期に妊娠出産し得た胆道閉鎖症の1例
富田 紘史星野 健石濱 秀雄清水 隆弘藤村 匠狩野 元宏山田 洋平下島 直樹藤野 明浩黒田 達夫
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 52 巻 5 号 p. 1103-1107

詳細
抄録

胆道閉鎖症術後,結婚し挙児希望のある25 歳女性.代償性肝硬変の状態により,小腸内腔に突出する大きな静脈瘤を認めていた.胆管炎による入院を契機に肝移植に関する情報提供を開始し,5 か月後に63 歳の父をドナーとする生体部分肝移植を施行した.術後は門脈血流不良,小腸穿孔,腸閉塞,胆管空腸吻合縫合不全のため計3 回の再開腹手術を要し,術後94 日目に退院した.肝移植5 か月後に残存した小腸静脈瘤の塞栓術を施行した.肝移植2 年後に妊娠し,母子ともに大きな問題なく妊娠38 週1 日に経腟分娩で健児を得た.慢性肝障害・肝硬変を有している胆道閉鎖症術後の成人症例では,妊娠・出産に大きなリスクを伴う.肝移植後の妊娠・出産に関しては安全にできるという報告が増えているが,挙児希望を理由に肝移植を施行することは一般的ではない.次世代を生み育てるまでの“成育医療”という観点で示唆に富む症例と思われ,ここに報告する.

著者関連情報
© 2016 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top