日本小児外科学会雑誌
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症例報告
膵分泌性トリプシンインヒビター遺伝子(SPINK1)異常と膵癒合不全を合併した反復性膵炎の1例
川野 正人後藤 倫子向井 基馬場 徳朗川野 孝文大西 峻山田 和歌中目 和彦加治 建家入 里志
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2019 年 55 巻 1 号 p. 110-114

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抄録

13歳の女児.9歳時に背部打撲後に腹痛,嘔吐,高アミラーゼ血症を認めたため,鈍的膵損傷と診断し保存的治療を行った.11歳時に,再び腹痛,嘔吐を認め,内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)で完全型膵癒合不全に伴う反復性膵炎と診断された.膵炎はその後も再燃を繰り返したため,13歳時に内視鏡的副乳頭切開術および膵管ステント挿入術を行った.膵炎の反復はその後も消失せず逆に増悪傾向を認め,膵癒合不全以外の膵炎の原因検索を行いserine protease inhibitor, Kazal type 1(SPINK1)遺伝子にヘテロ変異を認めた.膵癒合不全には健常者と比較してSPINK1遺伝子変異が高頻度に合併する.膵癒合不全に伴う反復性膵炎患者では遺伝性膵炎の遺伝子検索と膵炎の部位診断を事前に行い,遺伝子異常の合併した症例の外科的処置は膵炎が背側膵に限局している症例のみを対象にするなど,より慎重な治療戦略の決定が必要と考えられた.

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