2019 年 55 巻 2 号 p. 269-273
症例は12歳の男児で,黄疸を主訴に受診し,腹部造影CTおよびMRIで膵頭部に直径約6 cmの腫瘤性病変を認めた.囊胞の被膜および充実部に漸増性濃染の所見を有したため,膵solid-psuedopapillary neoplasm(膵SPN)と術前診断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.再建方法はChild変法とし,膵空腸吻合はBlumgart変法を用いた.病理診断も膵SPNであり,腫瘍は周囲膵実質への浸潤を認めず,切除断端は陰性であった.術後合併症なく退院し,現在術後1年半で再発なく経過している.本症例は疫学的に稀な,閉塞性黄疸で発症した膵SPNの男児例であり,術前診断には慎重な検討を要した.また成人領域において膵液瘻の優位な減少が報告されているBlumgart変法は,小児の膵頭十二指腸切除術における膵空腸吻合にも有用であると考えられた.