日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
原著
Hassab手術を行った小児門脈圧亢進症5例の長期経過
西 明内田 康幸五嶋 翼谷 有希子高澤 慎也黒岩 実
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 55 巻 5 号 p. 927-932

詳細
抄録

【目的】小児の門脈圧亢進症においては,食道胃静脈瘤に対しては内視鏡治療が,脾機能亢進に対しては部分的脾動脈塞栓療法が第一選択であるが,食道静脈瘤や脾機能亢進がコントロール困難な場合には外科的治療が必要となり,当科ではHassab手術を行う方針としてきたので,小児Hassab手術の長期成績につき検討を行った.

【方法】当科でHassab手術を行った門脈圧亢進症5症例の長期経過について診療録をもとに後方視的に検討した.

【結果】基礎疾患は肝外門脈閉塞症が2例,先天性肝線維症が1例,胆道閉鎖症術後が2例であった.全例で術前に吐下血を認め輸血を要していた.術前の内視鏡治療は最多で5回施行した.手術時年齢は3歳から10歳で中央値8歳であった.全例において術後は血小板減少が速やかに改善しその後も維持された.また術後経過中に肝機能の悪化は認めず,また肝性脳症発症も認めなかった.4例において術後に軽度の残存食道静脈瘤を認めたが,数回の内視鏡治療を行うことで消失し,その後は治療を必要としていない.胆道閉鎖症術後の1例はHassab手術後13年で肝移植となったが術後合併症で死亡した.他の4例は術後7~17年生存経過観察中であるが術後合併症を認めない.

【結論】小児門脈圧亢進症例のうち肝機能が保たれ肝移植適応の可能性が低く内視鏡治療に抵抗性の食道静脈瘤を有する例においてHassab手術は有効な選択肢の一つになりうる.

著者関連情報
© 2019 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top