2019 年 55 巻 6 号 p. 1037-1043
【目的】先天性門脈体循環シャント(CPSS)症例では,門脈血が直接体循環に流入することにより高アンモニア血症,肺血管病変,限局性結節性過形成(以下FNH)等の合併症をきたしうる.外科的治療を行った自験例を検討した.
【方法】2004年1月から2018年10月までに京都大学病院小児外科で手術加療を行った10例について,診断時の年齢,診断契機,シャント形態,臨床症状,手術時の年齢,手術適応,術式,予後を検討した.
【結果】診断時年齢は中央値で0か月(0か月~5歳),男児3例,女児7例.診断契機は6例が新生児マススクリーニング検査におけるガラクトース血症疑いで発見された.シャント形態は門脈本幹-下大静脈シャント5例,静脈管開存5例であった.5例に門脈肺高血圧症,2例に肝肺症候群,1例でFNHの急速な増大と門脈肺高血圧症,1例でFNHの結節内出血による急速増大,1例に成長障害と肝性脳症を認めた.1例は無症状であった.
門脈肺高血圧症の3例に生体肝移植を,2例(うち1例はFNH急速増大合併例)にシャント結紮術を施行した.肝肺症候群1例に生体肝移植を,1例にシャント結紮術を施行した.FNHの急速増大を認めた2例で外側区域切除術を施行した.肝肺症候群に対しシャント結紮後の1例で術後に肝内に多発性の門脈肝静脈シャント再発とこれに起因する門脈肺高血圧症を呈し,4年後に生体肝移植を施行した.術後に肺血管病変は全例で改善し生体肝移植を施行した5例中4例では内科的治療から離脱した.
【結論】CPSSで有症状の症例に対し外科的治療は有効で,病態やシャントの形態に応じた外科的治療を選択することが肝要である.