日本小児外科学会雑誌
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55 巻, 6 号
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おしらせ
挨拶
プログラム
原著
  • 木戸 美織, 岡島 英明, 田嶋 哲也, 鈴木 久美子, 金城 昌克, 園田 真理, 小川 絵里, 岡本 竜弥, 岡本 晋弥, 上本 伸二
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1037-1043
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    【目的】先天性門脈体循環シャント(CPSS)症例では,門脈血が直接体循環に流入することにより高アンモニア血症,肺血管病変,限局性結節性過形成(以下FNH)等の合併症をきたしうる.外科的治療を行った自験例を検討した.

    【方法】2004年1月から2018年10月までに京都大学病院小児外科で手術加療を行った10例について,診断時の年齢,診断契機,シャント形態,臨床症状,手術時の年齢,手術適応,術式,予後を検討した.

    【結果】診断時年齢は中央値で0か月(0か月~5歳),男児3例,女児7例.診断契機は6例が新生児マススクリーニング検査におけるガラクトース血症疑いで発見された.シャント形態は門脈本幹-下大静脈シャント5例,静脈管開存5例であった.5例に門脈肺高血圧症,2例に肝肺症候群,1例でFNHの急速な増大と門脈肺高血圧症,1例でFNHの結節内出血による急速増大,1例に成長障害と肝性脳症を認めた.1例は無症状であった.

    門脈肺高血圧症の3例に生体肝移植を,2例(うち1例はFNH急速増大合併例)にシャント結紮術を施行した.肝肺症候群1例に生体肝移植を,1例にシャント結紮術を施行した.FNHの急速増大を認めた2例で外側区域切除術を施行した.肝肺症候群に対しシャント結紮後の1例で術後に肝内に多発性の門脈肝静脈シャント再発とこれに起因する門脈肺高血圧症を呈し,4年後に生体肝移植を施行した.術後に肺血管病変は全例で改善し生体肝移植を施行した5例中4例では内科的治療から離脱した.

    【結論】CPSSで有症状の症例に対し外科的治療は有効で,病態やシャントの形態に応じた外科的治療を選択することが肝要である.

  • 仲田 惣一, 中原 康雄, 後藤 隆文, 花木 祥二朗, 人見 浩介
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1044-1048
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    【目的】当科では,新生児期の中間位・高位の直腸肛門奇形に対して①肛門側腸管への便の混入を防ぎ,根治術時に使用する腸が拡張することを予防できる.②腸脱出を起こしにくい.③尿路感染のリスクを減らす可能性がある.という理由からS状結腸に完全離断型人工肛門を造設しており,その実状を報告する.

    【方法】2009年4月から2016年6月までの期間に当科でS状結腸に完全離断型人工肛門を造設した男児の直腸肛門奇形症例を対象として,人工肛門に関連した合併症,根治術前の直腸径,根治術までの尿路感染の有無について診療録から後方視的に検討した.根治術前の直腸径は,術前造影検査の矢状断写真を用いて,直腸の最も太い部位の前後径で評価した.

    【結果】対象症例は男児10例であり,直腸前立腺部尿道瘻が4例,直腸球部尿道瘻が6例であった.人工肛門に関連した合併症は,手術部位感染は0例,腸脱出0例,狭窄0例,人工肛門の高さがないもしくは粘液瘻からの排液のためパウチ貼付に工夫を要する症例が3例であった.根治術で人工肛門の制限により肛門側腸管のpull-throughが困難となった症例は認めなかった.また,人工肛門再造設術が必要な症例も認めなかった.1例で根治術までに尿路感染症を認めた.根治術前直腸径は,中央値1.75 cmであった.

    【結論】S状結腸の完全離断型人工肛門は,パウチ貼付に工夫を有する症例を認めたが,合併症は少なかった.また,直腸が拡張してしまう症例は少なかった.

  • 村上 雅一, 中目 和彦, 矢野 圭輔, 馬場 徳朗, 春松 敏夫, 大西 峻, 山田 耕嗣, 山田 和歌, 加治 建, 家入 里志
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1049-1055
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    【目的】小児の気道異物は迅速な治療を要する緊急疾患である.しかしその臨床像は多彩な上,加えて異物がX線透過性であることが多いため診断が困難である.また小児の気道は細く,異物の摘出に難渋する場合もある.当科で経験した症例から小児気道異物の治療戦略について検討した.

    【方法】当科で診療した小児気道異物症例15例の臨床像や画像所見について後方視的に検討した.

    【結果】男児が10例(66.7%)と多く,2歳以下の症例が80%を占めた.症状から気道異物を疑い得たのは3例(20.0%)のみであった.異物誤嚥の目撃のみで無症状の症例も1例(6.7%)認めた.異物の種類は豆類が40.0%と最多で,また胸部単純X線検査で異物を指摘できたのは4例(26.7%)のみであり,それらはいずれもX線不透過の非食物であった.CT検査は7例で施行されたが,2例(28.6%)で異物の同定が不可能であった.全体として6例(40.0%)は画像検査上,異物を同定できなかった.摘出方法は硬性気管支鏡と異物鉗子による摘出が最多の6例(40.0%)で施行され,主に硬性の異物で行われた.3例(20.0%)は食物異物で柔らかく鉗子での把持が困難であり,軟性鏡下の洗浄・吸引で摘出された.

    【結論】小児気道異物は特異的な症状を呈することが少なく,また胸部X線検査で異物を特定することは困難で,CTでも偽陰性が少ないながら存在する.乳幼児の呼吸器症状では常に気道異物を念頭に置いた診察が重要であり,疑わしければ積極的に気管支鏡検査を行うことを検討すべきと考える.

  • 出口 英一, 坂井 佳恵, 佐々木 康成, 岩田 譲司, 後藤 幸勝, 岩井 直躬
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1056-1060
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    【目的】手術を受けた子どもの成長を支援するNPO法人の活動について報告すると共に,日常の診療時とは異なる視点から術後患児のQOLの問題点を探り,その解決策を検討すること.

    【方法】小児外科手術を受けた患児34名に対して,質問紙法によるアンケートを行い患児の健康上困っていること,医療情報の入手方法などを調査した.

    【結果】平成27年10月にNPO法人設立総会を開き,平成28年2月にNPO法人「手術を受けた子どもの成長支援」が認可された.NPO活動として健康相談会および,市民公開講演会を主催した.アンケート調査では34名全員から回答を得た.回答者の内訳は,先天性胆道拡張症の患児が27名,直腸肛門奇形3名およびヒルシュスプルング病4名であった.10歳以上の胆道拡張症11名中3名が発癌の可能性,3名が術後結石に関して不安を抱えていた.10歳未満の胆道拡張症10名中3名が発癌の可能性,2名が腹痛について,ヒルシュスプルング病2名中1名が創痕,1名が中心静脈栄養と成長について,また直腸肛門奇形3名中1名が腹痛について,1名が排便・排尿回数が多いことを質問した.日頃の医療情報の入手については,34名中32名が病院・主治医から得ているとした.一方,22名がインターネットを挙げた.

    【結論】小児外科術後患児と家族は定期的な外来診察に際して,主治医に悩みなどを十分に相談できていない可能性が浮き彫りとなった.また,患児と家族の医療情報の収集においてインターネットやSNSなどのネット情報が重みを増してきていることが明らかになった.NPO活動を通じて,術後患児の日常生活における不安・心配や困っていることを抽出し,情報提供をしていく必要があると考えられた.

  • 大林 樹真, 小池 淳樹, 古田 繁行, 田中 邦英, 長江 秀樹, 北川 博昭
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1061-1065
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    【目的】Ductal plate malformation(DPM)が原因とされる胆道閉鎖症(BA)は,早期発症と関連があり自己肝生存率に影響を与えている可能性がある.初回手術時の胆道閉鎖症の肝線維化とDPMの関連を検討した.

    【方法】1976年から2017年に当院で葛西手術を施行し,同時に肝生検が行われたBA 32例を検討した.DPMを認めた群をA群,認めなかった群をB群とした.初回手術日齢,portal-portal bridging(P-P)の程度,portal-central vein bridging(P-C)の有無,黄疸消失率(総ビリルビン<2.0 mg/dl)および黄疸消失に至るまでの日数を評価した.P-P<50%をGrade 1,>50%をGrade 2,偽小葉化がみられるのをGrade 3とした.統計学的解析はχ二乗検定およびStudent’s t-testを行い,有意差をp<0.05とした.

    【結果】A群が9例,B群が23例だった.両群の生存率に差は見られなかった.初回手術日齢はA群67.3±17.8日,B群89.0±29.7日だった(p=0.050).P-PはA群ではGrade 1が2例,Grade 2が3例,Grade 3が4例で,B群ではそれぞれ7例,12例,4例だった(p=0.281).P-CはA群7例,B群8例で認めた(p=0.028).黄疸消失率,黄疸消失までの日数に差を認めなかった(p=0.599,p=0.252).

    【結論】DPMを認めるBAは初回手術日齢が早いものの肝硬変像であるP-Cを認め,早期発症の可能性がある.

症例報告
  • 金森 大輔, 芦塚 修一, 梶 沙友里, 内田 豪気, 吉澤 穣治, 大木 隆生
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1066-1070
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    Currarino症候群(以下本症)の直腸肛門奇形術後に腸管拡張を伴った便秘症に対し,拡張腸管切除で排便機能が改善した2例を経験した.症例1:4歳5か月男児.直腸閉鎖,仙尾骨部分欠損,仙骨前髄膜瘤にて本症と診断し,人工肛門造設後に生後3か月で直腸吻合および髄膜瘤切除,生後6か月で人工肛門を閉鎖した.浣腸,緩下剤,漢方薬を使用したが,直腸からS状結腸の拡張が増悪し排便コントロールが困難となり拡張腸管を切除した.6歳現在,緩下剤と漢方薬のみ使用している.症例2:4歳3か月男児.鎖肛,仙骨奇形,仙骨前部脂肪腫にて本症と診断し,人工肛門造設後に生後6か月で肛門形成術,1歳1か月で人工肛門を閉鎖した.術後浣腸と洗腸を要し,直腸からS状結腸に拡張の増悪を認め,洗腸を離脱できず拡張腸管を切除した.12歳現在,自排便も認め浣腸のみ使用している.直腸肛門奇形に合併した慢性的な腸管拡張による収縮不良が便秘症の原因と考えられた.

  • 山田 耕嗣, 村上 雅一, 矢野 圭輔, 馬場 徳朗, 春松 敏夫, 大西 峻, 山田 和歌, 向井 基, 加治 建, 家入 里志
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1071-1075
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は6歳女児で,3歳時に強アルカリ洗剤誤飲による腐蝕性食道炎を引き起こし,その後難治性食道狭窄の状態となった.経腸栄養のために胃瘻を造設した後,30回に及ぶ食道拡張術に加え内視鏡的食道粘膜切除術(Radial Incision and Cutting method:RIC法)を行ったが改善が得られず,全胃挙上による食道再建を行う方針となった.手術は胸腔鏡操作にて食道抜去を行い,開腹操作と頸部切開にて胃挙上経路を作成し,頸部にて吻合を行った.術後は経口摂取可能な状態となり,吻合部の観察と軽度の狭窄解除のために定期的な内視鏡検査を行っているが,成長障害を認めず経過は良好である.難治性食道狭窄に対する全胃挙上による食道再建は生理的かつ安全な術式として有効であると考えられた.

  • 納所 洋, 野田 卓男, 谷 守通, 尾山 貴徳, 谷本 光隆, 宮田 将徳
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1076-1080
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は13歳女児.先天性心疾患および多脾症候群のため,小児科で加療されていた.12歳時,検査入院中に,血性嘔吐が出現し当科を受診した.胃軸捻転症および遊走脾と診断した.経鼻胃管による減圧で症状が消失し経過観察としたが,その後短期間で複数回の捻転が生じたため,腹腔鏡下胃固定術および脾臓摘出術を行った.術中観察では逆位の胃および複数の脾臓を認めた.後腹膜に固定された一部の脾臓を温存し,残る遊走脾を切除後,胃と腹壁を固定した.また,無回転型腸回転異常症を認めたため,予防的虫垂切除を行った.術後経過は良好で症状再発なく3年が経過している.多脾症候群には多様な心血管奇形や腹腔内臓器奇形を合併することが多い.胆道閉鎖症や腸回転異常症の合併が報告されているが,胃軸捻転症は極めて稀である.個々の症例において臨床像が異なるため,治療方針については十分な検討を要する.

  • 竹本 正和, 竹内 雄毅, 坂井 宏平, 東 真弓, 文野 誠久, 青井 重善, 古川 泰三, 田尻 達郎
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1081-1086
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    骨盤内リンパ管腫はリンパ管腫の中でもまれである.また一般的にリンパ管腫は不完全切除では再発することがある一方で,合併症の面から完全切除困難な場合がある.症例は7歳男児で発熱と排尿時腹痛を呈した.超音波,造影CTで下腹部~骨盤腔右側に10×7×11 cmの巨大な多囊胞性病変および拡張した右腎盂・尿管を認めた.尿道造影で前立腺球部尿道に狭小部を認めた.囊胞穿刺液の白血球はリンパ球優位であり,リンパ管腫と診断し腹腔鏡下囊胞全摘術を試みたが,囊胞背側は前立腺周囲と強固に癒着しており,術後排尿障害を懸念し,開窓術に留めた.囊胞壁を可及的に切除し,再発予防として囊胞内腔面にPGAシート貼付とフィブリン糊撒布を行った.術後経過は良好で,術後14日目に退院した.術後3年経過するが,再発や再燃なく経過している.

  • 森 昌玄, 渡辺 稔彦, 清水 隆弘, 鄭 英里, 平川 均, 上野 滋, 小田 洋一郎
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1087-1090
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は3歳女児.腹痛・嘔吐で発症し,胃腸炎が疑われて前医に入院し,腹部CTで,十二指腸内にair densityを含む網目状構造物を認めたため,毛髪胃石による腸閉塞が疑われ当科に紹介された.胃管による減圧および脱水・電解質異常補正を行っていたところ,胃石は十二指腸内から小腸内に落下し腸閉塞を呈した.内視鏡にて胃・十二指腸内に胃石がないことを確認後,臍部小切開にて開腹し,胃石が存在する空腸を創外に挙上して切開を加え,胃石を摘出した.術後経過は良好で,精神科に診療依頼した上,術後8日目に退院となった.自験例は,まれな毛髪胃石による腸閉塞を呈した最年少報告例と考えられ,安全で低侵襲な外科的治療を行うことができた.

  • 村上 雅一, 春松 敏夫, 矢野 圭輔, 馬場 徳朗, 大西 峻, 山田 耕嗣, 山田 和歌, 桝屋 隆太, 中目 和彦, 家入 里志
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1091-1098
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    先天性門脈体循環シャント(以下,本症)は肝肺症候群や肝性脳症などを生じる疾患でシャント血流遮断が根治治療となる.今回,異なるアプローチで治療した本症3例を経験した.1例は1歳女児で腹腔鏡下肝切除によるシャント血管遮断術を施行.2例目は心疾患合併の10か月男児で開腹でシャント血管バンディングを施行.3例目は17歳男児でコイル塞栓術を施行した.本症は肺高血圧など重篤な合併症の可能性があり積極的に治療すべきであるが,年齢・病型も異なり標準的な治療アプローチが存在しない.肝内門脈の低形成が軽度で閉塞試験で門脈圧25 mmHg未満の症例は一期的血流遮断の適応,肝内門脈が著しく低形成もしくは門脈圧25 mmHg以上の症例は二期的血流遮断の適応としている.術式は低侵襲なinterventional radiology(IVR)が望ましいがシャント血管の位置や肝内門脈の形成程度などを複合的に考えて選択すべきである.

  • 山口 峻, 小坂 太一郎, 吉田 拓哉, 山根 裕介, 田浦 康明, 高槻 光寿, 江口 晋
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1099-1105
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    症例1は3歳4か月女児.間欠的腹痛を認め,当院紹介となり,画像検査で小腸間膜内に広範囲に渡る囊胞性病変を認めた.腸間膜リンパ管奇形の診断にて,腹腔鏡下に病変切除術を施行した.病理診断は腸間膜リンパ管奇形であった.術後に乳び腹水を認めたが,保存的治療にて軽快し,術後17日目に退院となった.症例2は17歳女性.10歳時にリンパ管奇形の診断を受けたが,後腹膜に広範囲に浸潤し,全摘除が困難であり,外来経過観察となっていた.17歳時に腹痛発作が頻回となったため,腹腔鏡下に病変の部分切除術を行った.病理診断は腸間膜リンパ管奇形であった.術後経過に問題なく,術後13日目に退院となった.術後1年4か月経過した現在,病変増大や症状増悪は認めていない.腸間膜リンパ管奇形に対する治療は外科切除が一般的である.近年報告例が増加している腹腔鏡下アプローチにて切除手術を行い,整容性,安全性に優れた治療が可能であった.

  • 鴻村 寿, 安田 邦彦, 水津 博
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1106-1111
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は1歳女児.主訴は腹痛.近医を受診し,諸検査で右側腹部に石灰化を伴う10 cmの腫瘤を認めたため,卵巣腫瘤捻転を疑われて当院へ紹介された.当院入院時の腹部エコーにて腫瘤内に血流信号を認めたため,緊急性はないものと判断した.翌日,貧血と炎症反応増強を認め,前医MRI画像の再読影にて子宮捻転と診断されたため緊急手術を施行した.開腹所見では腫瘤の捻転は認めなかったが,子宮は時計廻りに180度捻転しており鬱血状態であった.左卵巣腫瘤が右側腹部に移動したため牽引されて子宮捻転を発症したと考えられた.腫瘤は核出術を施行し,子宮は捻転解除して色調が改善したため温存とした.卵巣腫瘤は病理学的に奇形腫と診断された.子宮捻転は子宮が長軸を中心に45度以上回転したものと定義される非常に珍しい疾患で,多くは妊婦や子宮筋腫をもつ中高年に認められる.筆者の調べた範囲では本邦2例目の小児例で,世界で最年少であった.

  • 加藤 翔子, 金子 健一朗, 松下 希美
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1112-1117
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    Congenital pouch colon(CPC)は結腸の囊胞状拡張を特徴とする稀な直腸肛門奇形である.Persistent descending mesocolon(PDM)は左側結腸の間膜短縮と固定位置異常を特徴とし,CPCにPDMが合併した報告はない.症例は男児で鎖肛とともに単純写真で右側腹部に巨大な結腸ガス像を認めた.生後15時間に腹腔鏡で観察すると,左側結腸間膜が短縮して後腹膜中央に固定され,S状結腸の先端がpouchとなっていた.短い正常S状結腸を温存するためpouch口側端を腸瘻とした.術後のpouch造影で尿道瘻,MRIで潜在性二分脊椎を認めた.頻回にpouchが脱出するため日齢47で腹腔鏡下高位鎖肛根治術を施行した.CPCは認知度が低く,正確な診断と治療が難しい.しかし,消化管,尿路,生殖器,骨格,神経系など様々な形成異常を伴うため,十分な術前精査が必要である.

  • 白石 斗士雄, 山根 裕介, 篠原 彰太, 吉田 拓哉, 田浦 康明, 小坂 太一郎, 高槻 光寿, 江口 晋, 永安 武
    2019 年 55 巻 6 号 p. 1118-1122
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は日齢11の女児.胎児超音波検査で羊水過多の指摘なく,在胎39週1日,2,918 gで出生.哺乳および体重増加が不良で,日齢10に胆汁性嘔吐を認めたため日齢11に当科紹介となった.胸腹部単純X線検査や上部消化管造影で先天性十二指腸狭窄症(本症)と診断し,腹腔鏡手術を施行した.十二指腸下行脚に腸管の口径差があり同部口側を横切開したが,その口側肛門側ともネラトンカテーテル(NC)を挿入できず,胃管からの送気でも切開部にエア流出がなかった.さらに口側で横切開を追加し,その口側の開存を確認した.肛門側は膵頭部に接している部より肛門側を2 cm縦切開し,同部にNCを挿入,送気で肛門側の開存を確認した.以上より2か所の狭窄と判断した.2か所の横切開をつなげて四辺形状に腸管壁を切除し,ダイアモンド吻合様に吻合して再建した.本症において,開腹手術と同様に腹腔鏡手術でも多発狭窄の有無の検索は必要であり,自験例のようなNCで送気する手技は有用であると考えられた.

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