霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: B-13
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口頭発表
シルバールトンの採食にみられた行動変異と植物薬用の可能性
*三谷 雅純渡邊 邦夫GURMAYA J. K.NOVIAR E河合 雅雄
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抄録
霊長類では、栄養の摂取ばかりでなく、植物の二次代謝産物を「薬」として利用することがある。しかし、この行動はいつ起こるか予測できないため、野外調査には制約がある。またホミノイド以外の霊長類では、栄養摂取と薬物利用の区別はあいまいである。インドネシア、ジャワ島のパンガンダラン自然保護区では調査対象のシルバールトン (Trachypithecus sondaicus) は 植林跡と古い二次林に住み、採食対象の多くが葉や若葉であるため、採食行動の観察が容易であった。そこで彼らの植物採食行動を観察し、薬物利用をシステマティックに探る可能性を探ったので結果を報告する。仮定としては、ルトンが採食をする時、きわめて多くの、あるいは少量だが確実に摂取した植物部位には何らかの薬効が期待できると考えた。採食対象の多くは光合成器官の葉であるため、パッチサイズは樹木の胸高直径で代表させ、採食の起こった時の総摂食量はΣ(ルトンの採食個体数 x 採食時間)とした。採食対象は植物種と 食物カテゴリー(成葉、若葉、葉柄、花、熟果、未熟果、種子)ごとに分け、総摂食量/食物パッチサイズの≧90パーセンタイルと≦10パーセンタイルのものを薬物利用の可能性が高いものとした。≧90パーセンタイル、≦10パーセンタイルともに成葉、若葉、葉柄が採食されたものが、いくつか候補としてあがり、熟果、未熟果、種子は、いずれにも認められなかった。ここで候補にあげられたものの内、Alchornea sp. (EUPHORBIACEAE)、Terminalia sp. (COMBRETACEAE)、 Ficus spp. (MORACEAE) は、東南アジアでは、人の薬用にも用いられる。結果と合わせて、本調査法の方法論上の有効性について考え、有用な二次代謝産物の探求と霊長類の採食行動についても議論したい。
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© 2006 日本霊長類学会
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