2020 年 56 巻 3 号 p. 302-308
一般的に腹壁破裂は臍帯の右側に開口し,左側腹壁破裂はまれである.症例1は女児.妊娠35週0日に帝王切開で出生.出生体重2,606 g.臍帯の左側に腹壁欠損孔あり.腸管外先天合併異常なし.日齢0にサイロ造設術,日齢10に腹壁閉鎖術を施行した.術後経過は良好で特記すべき合併症なし.症例2は男児.妊娠36週1日に帝王切開で出生.出生体重2,014 g.臍帯の左側に腹壁欠損孔あり.腸管外先天合併異常なし.日齢0にサイロ造設術,日齢6に腹壁閉鎖術を施行した.術後経過良好で臍ヘルニア以外に有意な合併症なし.左側腹壁破裂は女児に多く,腸管外先天合併異常を高率に合併する.腹壁閉鎖法は症例に応じ一期的もしくは多期的閉鎖が選択される.左側腹壁破裂そのものの予後は良好だが,腸管外先天合併異常に影響される.そのため,左側腹壁破裂の知識を有することは臨床上有用である.左側腹壁破裂の検討は腹壁破裂の発生機序解明の一助になると考えられる.