2021 年 57 巻 6 号 p. 992-996
上肢骨折を機に診断された遅発性先天性横隔膜ヘルニアの1例を経験したので報告した.症例は4歳女児.遊戯中に左上肢を骨折,術前の胸部レ線で肺野に腸管ガス像を認め,横隔膜ヘルニアが疑われ当科紹介となった.胸部単純CTでは,左横隔膜背側から左胸腔に腸管,脾臓,膵尾部の脱出を認め,消化管造影検査では,胸腔内に空腸から結腸脾弯曲の脱出が描出された.外傷術後14日目,待機的に横隔膜修復術を施行した.左肋弓下切開にて開腹,Bochdalek孔から胸腔内に空腸から下行結腸,膵臓,脾臓が嵌入していた.ヘルニア門は3.0×1.3 cmで,腫大した脾臓の還納に難渋し,欠損孔を切開し還納した.遅発性先天性横隔膜ヘルニアは予後良好とされるが,狭小なヘルニア門から脱出した腸管の絞扼・捻転や脾臓の鬱血・腫大などで還納に難渋することがあり,根治術の際は,無症候性でも術中の偶発損傷に備えて施術に当たることが重要と考えられた.